長谷部誠のコーチ抜擢は「大賛成」 異例の起用に期待する日本代表の新たな“化学反応”【前園真聖コラム】
キャプテン経験で培った長谷部の統率力は抜群
8月29日に行われた日本代表発表記者会見の冒頭に、山本昌邦ナショナルチームダイレクターは、「今回、みなさん資料見てお分かりのように、新たにコーチを迎えることとなりました」と長谷部誠コーチの就任を発表した。インターナショナルウイークの間だけ参加するという指導者の道を歩き始めたばかりの人物の起用という前例のない取り組みに、記者からの質問も相次いだ。果たして、この長谷部コーチの就任を元日本代表MF前園真聖氏はどう見たのか聞いた。(取材・構成=森雅史)
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8月29日のメンバー発表では選手以外に目を引く存在がリストに名前を連ねていました。所属が「フランクフルト」になっている長谷部誠コーチです。
日本代表発表記者会見で森保一監督が「長谷部コーチが持っている彼のヨーロッパでの経験は、間違いなくこれから我々が前進していくうえでいろんな刺激にもなり、前進するためにより必要」と語り、「指導者として学ぶ前に、選手として選手にどう働きかけるかという、より選手目線でいろんなことを伝えられるという大きな武器を持っている」と評価しています。
この長谷部コーチの招集について、僕は全面的に大賛成です。
2006年から2018年までという長い代表期間の中で経験した114試合は日本にとって貴重な財産です。キャプテンとして組織を引っ張ってきた統率力もあります。プレー以外のところでのアドバイスもしてあげられるはずです。
現在の日本代表の中にも、代表チームで一緒にプレーしたり、鎌田大地(クリスタル・パレス)のようにクラブのチームメイトだったりしたという選手もいるというのは、選手たちとコミュニケーションを取るのもやりやすいでしょう。ともに戦ってきたということで選手たちからのリスペクトもあります。
長谷部のコーチ起用で“新たな化学反応”に期待
役割としては、コーチとして何かを指導するというより、現役に近い感覚で選手たちをサポートしていくということになるのではないでしょうか。
山本ナショナルチームダイレクターは長谷部コーチの任期について聞かれると、「今回からスタートするんですけども、最終予選はもちろん、そして2026年北中米のワールドカップ(W杯)というところもしっかりと視野に入れて考えております」と、長期で考えていることも明らかにしています。
その間に長谷部コーチからいろいろなことを吸収しつつ、長谷部コーチにも日本代表チームについていろいろ学んでもらうという、先を見据えた施策であることも、とてもいいと思います。これまでも日本代表の練習場に長谷部コーチが現れた姿はカメラに捉えられていたので、たぶん時間をかけてどうやって参加してもらうかじっくりと策が練られたのでしょう。
日本代表は岡田武史監督の下、初めてW杯に出場した1998年フランス大会の時から選手の中に経験豊富な選手を入れ、そのベテランの力も借りながらチームの雰囲気を作り、結束を促してきました。
例えば2010年南アフリカ大会の時、川口能活が2010年シーズンは1試合もプレーしていなかったのに選出されました。それくらい選手たちをまとめる役割というのは重要なのです。
それが今度はスタッフの中に現役に近いコーチを入れ、新たな化学反応を生み出そうとしています。非常に面白い試みですし、ここまでの経験を持つ元選手ですから、きっとこれまで以上の効果もあると思います。
僕たちが現役の頃は、こんなスタッフがいることはなかったですし、画期的なことだと思います。すぐに成果が現れるというものではないと思いますが、間違いなく日本は強くなっていくことでしょう。
(前園真聖 / Maezono Masakiyo)
前園真聖
まえぞの・まさきよ/1973年生まれ、鹿児島県出身。92年に鹿児島実業高校からJリーグ・横浜フリューゲルスに入団。96年のアトランタ五輪では、ブラジルを破る「マイアミの奇跡」などをチームのキャプテンとして演出した。その後、ヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)、湘南ベルマーレの国内クラブに加え、ブラジルのサントスFCとゴイアスEC、韓国の安養LGチータースと仁川ユナイテッドの海外クラブでもプレーし、2005年5月19日に現役引退を表明。セカンドキャリアでは解説者としてメディアなどで活動しながら、「ZONOサッカースクール」を主催し、普及活動を行う。09年にはラモス瑠偉監督率いるビーチサッカー日本代表に招集されて現役復帰。同年11月に開催されたUAEドバイでのワールドカップ(W杯)において、チームのベスト8に貢献した。