S級ライセンス取得の過程で「ナノ学習」の壁に直面

　元日本代表DF内田篤人氏がMCを務めるスポーツチャンネル「DAZN」の「内田篤人のFOOTBALL TIME」に、MF中村憲剛氏がゲスト出演した。2人は現在、JFA公認S級ライセンスの取得を目指している最中。番組の出演は2年ぶりだったものの、昨年は講習会で長時間をともに過ごしたという。

　内田氏や中村氏ら23年度の受講者たちは、12月中に国内での講習が終了。S級ライセンスの取得までには2週間以上の海外研修を残すのみの状態であり、同期の中にはすでに海外研修を終えてS級ライセンスを取得した者も出ているという。内田氏が「ガチ勢の人たち」と冗談っぽく言うと、中村氏は「誤解を招くからやめなさい」と苦笑した。ちなみに同期には、明神智和氏、北嶋秀朗氏、大黒雅志氏らの元日本代表選手もいる。

　S級ライセンス取得の過程で「何が大変だった？」と内田氏に聞かれた中村氏は、「全部なんです。課題が多い。5回に分かれるのですが、集まった時も大変なのですが、集まりと集まりの間にナノ学習というものがあるんです」と言うと、内田氏が「大学に行って、指導実践を積んだり、課題が出て分析して自分のミーティングとか、監督についてプレゼンとか、いろいろあるんです」と補足。中村氏は「ずっとS級のことが頭にあって…」と言うと、内田氏は頭を傾けて耳の横あたりに手を上げて「寝る時も、このへんにS級のことがある。期限がいつまでとか」と、常にライセンス取得を意識した日々を過ごしていたことを明かした。

　そして、監督についてのプレゼンでは、中村氏がくじ引きの結果で発表する1人目となったうえにテーマがイングランド1部リバプールを率いるユルゲン・クロップ監督だったという。「みんな知ってるじゃないですか。プレゼンしなくても」と、中村氏は難しかったと話したが、内田氏は「講師の人が『中村が一発目で（プレゼンが良かったから）かなりレベルが上がってしまった』と言っていました。我々も受講しながら『おい、やべーぞ。中村憲剛、頑張ったぞ』みたいな、『レベル上げてきたぞ』という感じでした」と言い、この年代のプレゼンのレベルが全体的に高まったと説明した。

「動物の中で一番狩りが上手い」リカオンを例に挙げてプレゼン

　一方の中村氏にも、内田氏のプレゼンに驚くことがあったという。それは「リトリートの守備」をテーマとしたミーティングのプレゼンの時だった。「非常に秀逸でして。選手に見せる10分の映像の中にサッカーの話とかを入れないんです」と中村は明かした。内田氏は「そう。動物から入ります」と言い、そうなった経緯を説明した。

「一回、動物ネタをふざけて入れてみたら、結構、みんな食いついてしまって…」と内田氏が言うと、中村氏が「そんな人いないんですよ！　だって『リトリート』のテーマで動物の話を入れてくる人いないでしょ？　けど、ちゃんとつながっているから天才だと思った。動物からリトリートの話にちゃんとつながるんです」と内田氏に脱帽した。内田氏は「でも、そうしたら毎回、毎回、ミーティングで動物を俺が入れないといけない感じになってしまった」と、その後のミーティング映像作りが難しくなったことを明かすと、中村氏は「そう。みんなちょっと期待し始めちゃった」と笑った。

　ちなみに、このリトリートの映像で使った動物は、「象とか、ライオンとか、メジャーなものじゃないんです」と中村氏が言うと、内田氏は「リカオンです」と、聞きなれない動物の名前を言い、スタジオが「？」マークに包まれるなか、中村氏は1人で大爆笑すると、慌てて「俺だけ？　笑っているの」と言い、場を笑わせた。

　内田氏は「軽く言うと、リカオンというのは動物の中で一番狩りが上手いんです。ライオンとか、チータとかは、すごく（順位が）低い。リカオンっていうのは集団でガーって行って狩りをします。これ、サッカーの前線からの守備に似ていませんか？」と、動物からサッカーにつなげていった様子を明かした。中村氏は「最初みんなポカーンとしていたけれど、聞いていくうちに『なるほど』ってなった。それで最後に『リカオンのように奪いに行け！』って選手たちに言って練習に行くんです」と感心した様子で言うと、内田氏は「（指導中に）『リカオン！』って言うと、みんなガガガガッて前線から（ボールを奪いに）行くっていう。ふざけてないですよ」と、動物からサッカーにつなげていった様子を説明した。

　中村氏は「唯一無二感が凄い。素晴らしかったです。プレゼンが」と、最後まで日本代表の後輩でS級受講の同期となる内田氏の指導力を絶賛していた。