激震の韓国代表…立て直しの鍵ソン・フンミンの素顔 アジア杯ピッチ外で見せたキャプテンシー【コラム】

ヨルダン戦後に頭を抱えたソン・フンミン【写真:ロイター】
ヨルダン戦後に頭を抱えたソン・フンミン【写真:ロイター】

クリンスマン監督の解任、“内紛問題”…激動の韓国サッカー界

 韓国サッカー界に激震が走っている。大韓サッカー協会(KFA)は2月16日、ドイツ人のユルゲン・クリンスマン監督を解任すると正式発表。直前にはアジアカップでFWソン・フンミン(トッテナム)や、MFイ・ガンイン(パリ・サンジェルマン)らの“対立”も明らかになった。そのなかで、アジアカップで見せていたソン・フンミンのピッチ外の素顔に迫る――。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)

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 準決勝でヨルダンに0-2で敗れて64年ぶりのアジアカップ優勝に手が届かなかった韓国。直近で話題となったのはヨルダン戦の前に起きていた“内紛”だった。

 英紙「ザ・サン」や韓国紙「朝鮮日報」など複数メディアによると、ヨルダン戦の前日、夕食の場でイ・ガンインやチョン・ウヨン、ソル・ヨンウら若手組は早めにとり終えて、卓球に向かった。一方でキャプテンのソン・フンミンはミーティングもあるため、全員で取るように話し、勝手な行動を叱責したという。次第に口論に発展。「朝鮮日報」紙は「後輩であるイ・ガンインの態度に激怒したソン・フンミンが胸ぐらを掴むと、イ・ガンインは殴り返したという。周囲の選手たちは2人を止めようとしたが、ソン・フンミンは指を負傷した」と伝えていた。

 この騒動後、韓国代表の選手たちはクリンスマン監督にイ・ガンインをメンバーから外すように求めたが、ドイツ人監督は受け入れなかった。そして、16日にはクリンスマン監督の更迭が決定。チョン・モンギュ会長は「総合的に検討し、最終的に代表チームの監督交代を決断した。今回、今後の改善が難しいと判断。クリンスマン監督は、期待する指導力とリーダーシップを示していなかった」と説明した。

 まだ揺れ動くと思われる韓国代表。立て直しの鍵となるのはやはり主将ソン・フンミンの存在だろう。今回のアジアカップ、韓国はアディショナルタイムに4試合連続でゴールが生まれ、決勝トーナメントでも劇的な勝ち上がりを見せた「ゾンビサッカー」と言われた。ラウンド16のサウジアラビア戦で後半アディショナルタイムに同点ゴールを決めて1-1に追いつき、PK戦の末に勝利。続く準々決勝のオーストラリア戦でも、後半のアディショナルタイムにソン・フンミンがペナルティーエリアで仕掛けてPKを誘発。ファン・ヒチャンがこれを決めると、延長戦でソン・フンミンが直接フリーキック(FK)を決めて逆転勝利を収めた。

 120分戦ったサウジアラビア戦から中2日で迎えたオーストラリア戦。後半に入ってもう選手はフラフラだった。全試合フル出場のソン・フンミンは何度も手を腰にやり、体力的に限界だった様子が記者席から見て取れた。そんななかで、PKを誘発、延長戦の直接FK弾……会場はスーパースターを目の当たりにして、大熱狂となった。たった1人でチームを勝利にもたらした男はもちろんマン・オブ・ザ・マッチ。試合後、会見場に現れた。

 記者からの問いに真摯に答え、最後の質問に。その質問も答え終わったあと、横で通訳が韓国語から英語に翻訳している途中、司会者の方を向いた。「1つだけいい?」そのような仕草で、人差し指を立てて首を傾ける。通訳が訳し終わると、立ち上がり出した記者を制しして自ら切り出した。

「試合のあと、スポットライトは選手に向けられます。皆さんにお願いしたいのですが、今日チームが勝てたのは私のプレーのおかげではありません。チームのおかげです。ほかの選手、スタッフ、チームにスポットライトを当ててください」

 明らかに「個」の力で窮地を打開した一戦だったが、最後に力を振り絞れたのは仲間のおかげだと話した。この言葉に会見場にいた誰もが心を打たれ、そのキャプテンシーに感銘を受けた。

 チームを思う気持ちからイ・ガンインとの衝突にもつながったのだろう。クリンスマン監督の後任は未定とされているが、新監督のもとでもきっと主将のポリシーは変わらないはずだ。

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)



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