原口元気、なぜ起用されない? 好評価も「遅くとも夏移籍」の可能性…32歳MFの現在地【現地発】

苦境が続くシュツットガルトの原口元気【写真:Getty Images】
苦境が続くシュツットガルトの原口元気【写真:Getty Images】

シュツットガルトで出場機会の少ない原口、ドイツ2部クラブからのオファーも

 シュツットガルトがフライブルクにアウェーで3-1と勝利したブンデスリーガ第20節の試合にMF原口元気の姿はなかった。

 移籍市場が閉まる直前にプレミアリーグのブライトンからシュツットガルトへレンタルでの獲得が決まった元ドイツ代表MFマフムド・ダフートがベンチ入りを果たし、後半31分から早速途中出場を果たしているのとあまりに対照的な構図だった。

 試合後、シュツットガルトのセバスティアン・ヘーネス監督はダフートのデビューについて、次のように話していた。

「どんなプレーをもたらしてくれるのか、分かっていた。ピッチに立つとすぐチームにアイデアをもたらし、安定感のあるプレーを見せてくれた。彼がいてくれることが嬉しい」

 第19節のライプツィヒ戦ではボランチのアタカン・カラソルが5枚目のイエローカードで出場停止。地元紙も「今度こそ原口にチャンスが?」と出場の可能性について書いていたが、アップを続ける原口に声がかかることなく試合は終わってしまった。

 12月の段階でファビアン・ボールゲムートSDは、原口について次のように話している。

「ゲンキの役割は決して簡単なものではない。だが彼はとてもプロフェッショナルな選手で、全力で取り組んでくれている。それに彼には多くの経験がある。今季まだ我々の助けとなってくれるはずだ」

 だが、本当にそんな機会は来るのだろうか?

 今季2ボランチでプレーするカラソルとアンジェロ・スティラーは互いの補完性が高く、攻守両面でチームの心臓部を支える存在だ。運動量豊富に走り回るのではなく、素早い状況判断で適切なポジショニングを取り、最適なプレー選択をしていく2人は替えが効かない存在となっているのは誰もが認めるところだ。

 ただ、だからといってここまで起用されないものだろうか。11月の代表中断期に行われたテストマッチでも中盤でスタメン起用されたのは32歳の原口ではなく、18~19歳の若手選手だった。そもそもヘーネス監督が中盤センターに求める役割が、原口獲得を推した前任者ブルーノ・ラバディアとあまりに異なっているという事実がある。

 地元紙によると、原口の下にはドイツ2部リーグのマクデブルクからオファーもあったそうだ。だが、家族の事情もあり遠くへの引っ越しなどは難しい状況だという。隣国スイスの可能性もあるのではという見方もされていた。

ファンの質問に流暢なドイツ語で対応、理想の選手も回答「すごい賢い選手だよね」

 そんな原口の様子について報じた記事を見つけた。シュツットガルトから130キロほど離れた黒い森地域にある小さなオーバーヴォルファッハという村にシュツットガルトのファンクラブがある。シュツットガルトにはオフィシャルなファンクラブが約450あるのだが、そのうち21のファンクラブがそれぞれプロ選手の訪問を受けることができる。

 12月、原口は会員数53人のアットホームなファンクラブのクリスマスパーティに参加している。

 ファンからの数多くの質問が寄せられるなか、例えば「理想とする選手は?」と尋ねられると、「トーマス・ミュラー。すごい賢い選手だよね」と返答するなど、フレンドリーに流暢なドイツ語で答えていたという。

 そんな原口が現状については、次のように話していたようだ。

「まだ夏まで契約が残っている。遅くともそこで移籍することになるかなと思う。冬に興味深いオファーがあったら、2部リーグからでも考えてみる」

 選手とクラブは契約を結んでいる。出場機会がないから移籍を希望することはできても、必ず移籍できるわけではない。あらゆる条件が整わないと移籍は成立しないのだ。

 主力選手がシーズンを通して怪我をしないという保証はない。カラソルとスティラーの2人が負傷で長期離脱という不測の事態が起きる可能性はある。当然チームのパフォーマンスが崩れに崩れて、変化が必要なことだってあるかもしれない。クラブサイドからするとトレーニングのクオリティーを高く保つためにも十分な選手数が必要だ。ピッチ上の関わり合いだけではなく、ピッチ外での影響力というのも考慮される。

 それに来季移籍を考えるなら、そこでチャンスを掴むために自身のクオリティーを高めるチャレンジをしておかないと、次にもつながらなかったりする。これほどまでに試合に出られない現状に納得がいくわけがない。それでも、やっておかなければならないことは確かにあるのだ。そして原口は自暴自棄になってやるべきことを投げ出したりはしない選手だ。

 原口が元気にまたピッチを躍動する日を願いたい。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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