「そこまで細かく言うのは無理」 日本代表OBがベンチからの“指示希望論“に持論

内田篤人氏と安田理大氏がアジアカップについて言及【写真:ロイター】
内田篤人氏と安田理大氏がアジアカップについて言及【写真:ロイター】

元日本代表DF内田氏と同DF安田氏が日本代表のアジアカップについて議論

 カタールで開催されたアジアカップで、日本代表はベスト8敗退となった。優勝候補の本命と見られていたが、結果を残すことはできなかった。この大会を反省するとともに、今後の戦いに生かしていくことが必要になる。元日本代表DF内田篤人氏と元日本代表DF安田理大氏は、スポーツチャンネル「DAZN」の番組「内田篤人のFOOTBALL TIME」で、プレス回避とロングボールへの対応、そしてセットプレーの守備の3点について語った。

 準々決勝のイラン戦では、相手のプレスに苦しめられて後方からのビルドアップが上手くできなかった。現役時代、右サイドバック(SB)でプレーしていた内田は「基本的に僕はサイドバックの考え方なので」と前置きをしたうえで、「ボランチ、もしくはセンターで作れないなら、サイドバック(SB)で作るべきだと思います。基本は真ん中を使わないと、サイドに早めに来られてもハマるだけ」と語った。

 そして、後半8分の失点につながった場面の映像を見ながら、右サイドバック(SB)のDF毎熊晟矢が最終ラインのDF板倉滉やDF冨安健洋よりも、高い位置をとっている姿を見て「ちょっと高いね。隣に行くくらい、フラットくらいの位置で助けてあげてもいいと思う」と指摘した。

 また、日本が敗れたイランとイラクの試合では、ロングボールへの対応も課題として残った。イラン戦の後半アディショナルタイム、板倉が相手選手を倒してPKを与えた場面でも、相手陣内からのロングボールがきっかけだった。内田氏は「みんなも一緒に考えてほしいんだけど」と言い、5バックを採用することも手だったと語った。

「延長に持っていきたいのか、90分で仕留めるのか。仕留める身体でいったとは思いますし、5バックにすると選手としては『守るんだな』と思われてしまうのも1つ。でも、そこをしのげば延長に行けるから(4バックに)戻せる。(左SBに)伊藤(洋輝)選手が入っていたので、三笘選手を入れたならば、三笘選手、伊藤選手、冨安選手、板倉選手、毎熊選手の5枚でしのぎ、延長に入ったら様子を見ながら4バックに戻すこともできたかな。3バックにするならいろいろやり方はあるだろうと上から見ていて思いました」

長友佑都は代表から離れてもJリーグの第一線でプレー【写真:徳原隆元】
長友佑都は代表から離れてもJリーグの第一線でプレー【写真:徳原隆元】

求められる“ポスト長友”の存在

 森保一監督は、後半22分にMF三笘薫とMF南野拓実を投入していた。この交代策について内田氏は「選手は、『点を取りに行くのかな』と思う。そこがギャップね。点を取りに行くサインだなと思うけれど、試合の現状としてはロングボールを放り込まれて、自陣にべた引きする。そうなると『カウンターなのかな』とも思う」と、選手交代がハマらなかったことを指摘した。

 試合後にはベンチからの指示を求める選手の声も上がっていた。だが、安田氏も「ゲームが動いている時に、そこまで細かく言うのは無理だと思う。飲水タイムがあったらいいけど、細かくはできない。一番はピッチで選手たちが感じてやるのが理想」と、試合の中で外から変更を加えることの難しさに触れた。

 今大会、日本は全試合で失点を喫したが、決して身長の高い選手が多いわけではないベトナムやインドネシアからもセットプレーでゴールを許した。映像を振り返り内田氏は、「こんなにセットプレーで失点したっけっていうくらい、失点していますね」と驚くと、安田氏は「ほとんどセットプレーから失点したと思う」と話した。実際、日本の失点は8失点中5失点がセットプレーからだった。

「大会が始まってから立ち上がり悪いとか(指摘されても)、チームは生き物なので改善しようとしても、なかなかね(難しい)」と内田氏は言い、さらに「背の大きい選手を並べればいいというものでもない。難しいもので」と、指導者目線で語った。

 また、失点後のチームの反応についても「失点したあとの選手の感じが、静かだなと思った。誰かが怒るわけでもなく、言うわけでもない。そのままボールを持ってセンターサークルに向かうというのが、ちょっと僕の中では寂しかった」と、内田氏は言う。現役時代の内田氏も、チームを鼓舞するタイプではなかったため、「いいんですよ。淡々とするのも。僕も淡々とやっていましたから。でも、チームの中に何人かいないといけない」と、感情を表に出すタイプの選手の不足に言及した。

 安田氏も同意し、イラン戦の後半30分にイランのキャプテンであるMFアリレザ・ジャハンバシュが、三笘からボールを奪った際に大きくガッツポーズして、チームを鼓舞したシーンを例に出して、「ああいうのもやる選手が必要」と訴えた。「それで雰囲気とかを熱くさせるとか。ウッチーは外に出さへんタイプだけど、そういうのを見てハートは熱くなる。そういうのも必要だと思う」と、語った。

 カタール・ワールドカップ(W杯)の時は、DF長友佑都がピッチ上だけでなく、ベンチからもチームを鼓舞していた。しかし、内田氏は「今回はそういう選手もいなかった」と言い、「そういうチームワーク的なものも、寂しかったな」と、チームに熱量が欠けている印象を受けたことも指摘した。

 それでも、内田氏は「チームとしての流れもある。どちらにしろ連勝したままでW杯に行くとは思っていなかったし、それがアジアカップで出てしまっただけ」と前向きに語り、安田氏は「このメンバーに、さらに新しい選手もW杯には絶対に出てきますから」と、今後の競争が激化することにも期待した。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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