森保J最大の“疑念” 元日本代表FW佐藤寿人氏「勘がいい」南野の左起用“是非”を問う【現地発】

日本代表の南野拓実【写真:2024 Asian Football Confederation (AFC)】
日本代表の南野拓実【写真:2024 Asian Football Confederation (AFC)】

第2戦イラク戦の敗戦を分析

 森保一監督率いる日本代表は1月31日にカタール・ドーハで行われているアジアカップ決勝トーナメント1回戦でバーレーンと対戦する。「FOOTBALL ZONE」では中継リポーターとして取材を重ねる元日本代表FW佐藤寿人氏を現地で直撃。グループリーグは2勝1敗の2位通過を決めた森保ジャパンだが、唯一敗戦を喫した第2戦イラク戦(1-2)で何が起こっていたのか。議論を呼んだ“2列目”の起用について佐藤氏の見解に迫る。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)

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 初戦のベトナム戦は苦戦しつつも4-2で勝利。フランストリオの伊東純也、南野拓実、中村敬斗、1トップはコンディションの最も良かった細谷真大、ボランチに遠藤航と守田英正、最終ラインは菅原由勢、板倉滉、谷口彰悟、伊藤洋輝、GKは鈴木彩艶を起用した。南野の2ゴール、中村のA代表デビューからの6戦6発となる一撃、途中出場の上田綺世が決めての4得点だったが、一時は相手に逆転を許すなど劣勢に陥った場面もあった。

 次のイラク戦ではボランチよりうしろは変更せず、2列目に伊東、久保建英のトップ下、南野を左サイドで起用。1トップは浅野拓磨で2人変更となった。

 世代交代も進み、大幅にメンバーが変わった第2次政権では南野の左サイドは初めてとなった。佐藤氏はこう分析する。

「第1次政権ではやっていたし、シンプルに勝ちに行くためのメンバーだったと思う。結果的に後半頭から配置を変えたので、前半は上手くいったか、いってないかで言うと上手くいかなかった。それで後半変えたというシンプルなところだと思うんですよね。前半シンプルに上手くいかなかったけど、それは別に2列目のポジションだけじゃなくて、早い時間帯に先制点奪われたというところにある」

 イラク戦では、3万8000人の声援が響く超アウェー。雰囲気に飲み込まれそうな前半5分、日本は右サイドを崩されると、中央へのクロスをGK鈴木彩艶がパンチングで弾く。この流れたボールをFWアイメン・フセインにヘディングで押し込まれてあっさりと失点した。

 この失点が痛かった。だがなぜ、この1点が痛かったのか。

「奪われたことで、うしろが前に出て行けなくなった。それはやっぱりうしろのスペースを与えたくないからとなると前が孤立する。余計に攻撃に厚みがない、なおかつ左で(南野)拓実が持っても孤立するというところの悪循環に陥ってしまったのは、やっぱり早い時間帯の先制されたところは間違いない」

 象徴されるシーンがある。前半20分、左サイドで伊藤洋輝がボールを持ち、南野へ。南野がクロスを上げようとした時に中央には浅野しかいなかった。中央の枚数が足りずに、結局南野は自分で仕掛ける。その瞬間に久保と伊東がペナルティーエリア内に到着。だが、この時にはもう相手の守備の陣形も整いチャンスの芽は摘まれてしまった。

「本当だったらそこで右から入ってくるというのを、このカタールでの公開のトレーニングでもやっていた。サイドで作って逆サイドもしっかり入ってくるというのを意図してやっていた。さらに、あの時間帯に先制もされていて、出ていかなきゃいけない。でも出て行けない部分があった。先制された事でうしろにスペースを与えたくないとなり、うしろが重くなった。いろんな部分で試合の難しさがあったと思う」

 それはメンタル的なところが大きく関係する。「怖かったらいけないわけですから、点を取るためにリスクが必要」。そのなかで、南野の左サイド起用についてはこう話した。

「個人的にカタール・ワールドカップ(W杯)の最終予選から感じてきているのは、拓実がより輝くのは中央の位置。それはやっぱり僕自身もプレイヤーとして、誰がどのエリアでどういう仕事ができるかというのは、ピッチレベルで感じてきていること。なぜなら守備のスイッチャーとしても、全体を見られる、左右前後のスイッチも含めて勘がいい。あとはやっぱ狭いエリアで受けられる。これはプレミアで、あのリバプールで、満足いく出場機会がなくてもパッと使うと普通にあの強度で、あれだけのプレースピードでできるというのが示している。もちろん左でもできると思うんですけど、それを考えたときに、やっぱり持って運んで仕掛けて外す、というわけではない。セカンドトップ、ゼロトップの頂点でもいいと思う」

 後半からトップ下にポジション変更して攻撃は改善された。第3戦のインドネシア戦でも守備での貢献度が高かった。ここから先の一発勝負では着実に勝利を目指さなければいけない。勇気を持ってアジアの頂点へ。決勝トーナメントではそんな姿が見られるはずだ。

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)



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