歴史的敗戦からの復活…森保ジャパンが「良くない雰囲気」から立て直せた訳【現地発】

日本代表が敗戦から立ち直れた理由とは?【写真:ロイター】
日本代表が敗戦から立ち直れた理由とは?【写真:ロイター】

連勝を止めたイラク戦…森保ジャパンはなぜ這い上がれたのか

 森保一監督率いる日本代表は、1月24日にカタール・ドーハで行われているアジアカップのグループリーグ第3戦を迎え、インドネシア代表に3-1で勝利した。これによりベスト16入りが決定。2位でグループを抜けて決勝トーナメントへ進む。第2戦のイラク戦では1-2と敗戦を喫し、10連勝がストップ。だが、そこからチームはいちから立て直してインドネシア戦に臨んだ。その舞台裏に迫る。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)

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 目の前の一瞬に集中した。悔しい敗戦を喫した第2戦のイラク戦から先発メンバーを8人入れ替えて臨んだインドネシア戦。立ち上がり2分にMF堂安律からのパスを受けたFW上田綺世が右サイドのペナルティーエリア内で中央を向くと、相手DFに抱えられて転倒。当初はノーファウルの判定だったが、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)による介入でオンフィールドレビューが実施されPKの判定に。これを上田が自ら決めて前半6分に先制した。

 さらに後半6分、MF中村敬斗がキープしたところで左サイドを回り込んだ堂安にパスが通り、ゴール前を横切るラストパスにファーサイドで合わせた上田が押し込んで2得点目。代表通算10ゴールとなる一撃で2-0とリードを広げた。さらに同43分には上田のシュートから相手のオウンゴールを誘発。“ほとんどハットトリック”で勝利に貢献した。

 まさかの敗戦となったイラク戦。1992年大会以降初めてのグループリーグ敗戦でイラクにも1984年以来40年ぶりの敗北となった。歴史的な1敗は重くのしかかったように思えた。

 だが、実際は違った。グループリーグでの1敗。まだ次がある。選手たちはすぐさま切り替えた。翌々日の21日、約30分間のミーティングでは、選手から活発な意見が飛び出した。主にライン設定で議論が行われ、ハイラインに保つことを改めて確認した。

 もちろん修正点を話すことは大事。だが、それ以上に重要だったのは意識を統一できたこと。それは目の前の一戦、目の前の相手、目の前のボール、目の前の瞬間を決しておろそかにしないこと。

 試合に向けて、選手たちの口からは「まずはインドネシア戦だけを考える」という言葉だけが聞かれた。堂安は試合の前日にこう話している。

「先を見ている場合じゃないと思う。森保さんいつも言っていますけど、1試合1試合やっていく中で先に優勝がある。それは本当に今必要なことだと思う」

 その気持ちの強さはキックオフ直後から表現できていた。前線へのプレス、球際、攻守の切り替え、ハイライン、まずベースの怠ってはいけないところをきっちりとやり切る。そこから攻撃を組み立てる、チャンスの幅を広げてゴールを狙う。前半は0-0でもOK、1-0でも勝ち、隙を見せずに勝ちにこだわる。

 10連勝の中で、ほんの少し、ほんの少しずつ“綻び”は出ていた。その綻びに気付いた選手たちはまた一から引き締めた。

堂安の口から出た「改めて優勝すべきチーム」の意味

 試合後、堂安は言った。

「チーム的には1試合、2試合終わって良くない雰囲気だったけど、何とか活気づけようというのと、普段出ていない選手にとってはチャンスということでそういう声掛けはしていた。アピールする選手が多かったと思う。(プレスバックは)ベースだと思う。そこを評価されている時点でここまでの2試合がどれだけ良くなかったか分かる。全選手がクオリティーを出せれば今日のようなゲームはベースであるべき。出ていない選手が起爆剤になるように表現できた。途中から入る選手、そのクオリティーの高さは頼もしさしかなかった。改めて優勝すべきチームだと思う」

 当たり前のことだが、今の森保ジャパンにとっては本当に大事なことだった。森保監督が何度も何度も言い続けた「目の前の一戦」という言葉。これは忘れてはいけない「原点」だった。

 立ち返る場所ができた。26人全員が理解した。優勝までいばらの道になるのは分かっている。でも思いは同じ。次の一戦もただ勝つだけだ。

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