“闘魂の79タッチ” マンチェスター・U戦で証明された吉田麻也のクオリティ

募らせる危機感、「また冬に新しいCBを獲られたらたまらない」

 

 この1~2週間。アルデルバイレルトが故障から立ち直る前に結果を出し、ベルギー代表DF、また主将フォンテと遜色ないセンターバックであることを証明する。それは吉田麻也にとって非常に現実的な、プロ生命をかけた挑戦だ。

 しかし、来月、新年が明けるとアジア杯が待っている。イングランド特有の年末年始の過密日程の中、麻也の出場機会も確実に増えるはずの重要な時期、日本代表DFは最長で1か月近くもチームを離れなくてはならない。

「今はアジアカップのことを考えるよりか、サウサンプトンのことを考えて、こっちで結果を出すことだけに集中すべきだと思う。ただ(アルデルバイレルトがすぐ復帰しそうで)本当に今週、来週が勝負になる。アジアカップ前に、クーマン監督に信頼してもらえるパフォーマンスを見せないといけない。また冬に新しいCBを獲られたらたまらない」

 クラブレベルでは世界の頂点を争うマンチェスター・U相手に堂々としたパフォーマンスを見せるセンターバックになった。だからこそ、日本代表には不可欠な存在である。無論、アジア杯での代表招集は必然だ。

 その一方、所属するサウサンプトンは、すでにプレミアで名将の呼び声も高くなりつつあるクーマン監督の下、リーグ杯制覇をはじめ、来季の欧州戦参戦を目指し、並みいる強豪クラブを相手に猛烈なチャージをかけている。

 サッカー選手としての最高のステータスである代表の座と、プロとしてのプライドと生活をかけて戦うクラブとの狭間で苦悩することは、ある種、一流選手の宿命ではある。けれども、シーズンたけなわの1月に行われるアジア杯、アフリカ・ネーションズカップも同様ではあるが、この大会日程が、欧州サッカー界における、アジア人選手とアフリカ人選手の多少の価値低下につながっていることは否めない。

 けれどもそうはいっても、アジア杯制覇は日本代表にとって大きな悲願。その重要な大会開催直前、麻也はイングランドで、今週末は格下バーンリーとのリーグ戦を戦い、来週火曜日にも必勝が期せられた、チャンピオンシップ(英2部リーグ)所属のシェフィールド・Uとのリーグ杯準々決勝を控えている。

 このユナイテッド戦でも、健闘する麻也とサウサンプトンにせめて勝ち点1と願ったが、その思いはかなわなかった。しかし次の2試合では、今度こそ日本代表DFに、彼自身が望む結果をしっかりとつかんでもらいたい。そして、プレミアの基準をきっちり満たしたセンターバックであることを証明して、オーストラリアに旅立って欲しいものである。

【了】

森昌利●文 text by Masatoshi Mori

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

 

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