2016年クラブW杯の輝きを取り戻せ 柴崎岳、“常勝軍団”完全復活の起爆剤となるか【コラム】

鹿島に復帰が決まった柴崎岳【写真:徳原隆元】
鹿島に復帰が決まった柴崎岳【写真:徳原隆元】

スペインで挑戦を続けていた柴崎が鹿島へ復帰

 9月1日、鹿島サポーターの心を熱くさせるニュースがチームから発信された。柴崎岳の鹿島アントラーズ復帰が発表されたのだ。

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 2021年まで鹿島の強化で陣頭指揮を執っていた鈴木満氏(現・強化アドバイザー)は、チームから海外に移籍した選手とは、その後も積極的に連絡を取っているという話を聞いたことがある。

 もちろん鹿島から海外へと活躍の舞台を移した選手が、再びJリーグでプレーすることになったとしても、すべての選手が古巣へと戻ってきているわけではない。

 だが、中田浩二氏や小笠原満男氏、さらに内田篤人氏、そして現役では鈴木優磨に植田直通が鹿島へと戻ってきている事実は、海外移籍が決定し、送り出したあとも選手と良好な関係の構築を心がけているチームの方針が、プラスに作用していることは間違いない。

 そうしたなかで7シーズンぶりに復帰を果たした柴崎だが、海外に移籍する前の時代で印象に残っている写真がある。それは16年12月に日本で行われたFIFAクラブワールドカップ(W杯)でスペイン1部レアル・マドリードと対戦した決勝戦での1枚だ。

 Jリーグ優勝で大会への出場権を獲得した鹿島は、対戦相手を次々と撃破し決勝へと進出する。試合は延長戦の末に惜しくも2-4と破れたが、レアル・マドリードのゴールネットを2度とも揺らしたのが柴崎だった。特に1-1の同点から一時は鹿島がリードを奪う後半7分にレアル・マドリード守備陣を華麗に交わし、左足で放ったシュートは圧巻のゴールだった。

 ゴールが決まると柴崎はバックスタンド側へと駆け抜け、仲間からの祝福を受ける。その歓喜する姿を捉えた1枚は、これまで鹿島のユニフォームを身に纏ってプレーする柴崎の写真の中で、最も印象深いものとなった。

柴崎の正確なパス能力はチームを救うはず

 翌年にはスペインのCDテネリフェへと移籍。世界の舞台を経験した柴崎は、再び鹿島のユニフォームに袖を通すこととなった。

 柴崎は試合の流れを的確に読み、インサイドキックを多用した相手の急所を突く正確なパスでゴールを演出するのを得意としている。現在の鹿島を構成する中盤の選手たちと柴崎のスタイルを比較してみると、攻撃的MFの荒木遼太郎や松村優太より、中盤の後方からチームを支えるディエゴ・ピトゥカに近い。

 そのディエゴ・ピトゥカは今シーズンでの退団が決定的となっているため、柴崎の鹿島復帰は来年以降のチーム編成を考えても的確な補強と言える。

 今シーズンの鹿島はリーグ序盤では低調な内容が続いたが、4月23日のJ1第9節アルビレックス新潟戦からチームは好転の兆しを見せ始める。5月14日に行われた第13節名古屋グランパス戦や7月16日の第21節FC東京戦と、お互いに長所を出し合う展開の試合では力強い内容で勝利を挙げた。植田と関川郁万のセンターバックコンビを中心とした守備陣は対人プレーで強さを発揮し、鈴木が牽引する攻撃陣も勝負強さが加わり、リーグの順位も上位へと進出してきている。

 しかし、チームのレベルを推し量るうえで重要となる戦術の観点からすれば、完成度はそれほど高くはない。パス交換でのズレやミスを激しい闘志と豊富な運動量でカバーしている印象だ。

 そうした各選手がハートとフィジカルの強さで状況に対処するプレーの積み重ねはダイナミックに見え、決して悪くはない。

 だが、その反面、緻密さに欠けることも否定できない。さらなる成績を目指すには、安定感のバロメーターとなるチームとしての完成度を高めたいところだ。

 そこで柴崎である。彼の武器である正確なパス能力は、今の鹿島の修正すべきポイントをきっと改善させるはずだ。

 ただ、柴崎と言えども簡単には定位置を確保することはできないだろう。樋口雄太や佐野海舟は高い守備力を誇り、チームの攻守を支える重要な存在となっているだけに、彼らからポジションを奪うのは容易なことではないだろう。

 柴崎には乗り越えなければならない壁が待構えている。それでも選手としの輝きを求めて、ヨーロッパでの経験を武器に鹿島での挑戦を始めた柴崎。16年に撮影した歓喜の表情を再びJリーグの舞台で見られるか。常勝を誇っていた、かつての鹿島への完全復活に向けて柴崎のプレーに注目が集まる。

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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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