J2千葉が好調清水を止めた訳 ファインダー越しに見た1勝以上の価値とは?

千葉がホームで清水に1-0で勝利【写真:徳原隆元】
千葉がホームで清水に1-0で勝利【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】千葉は清水戦で試合終了間際に勝ち越しゴールを奪って勝利

 ジェフユナイテッド千葉が試合のペースを握ったのは、すでに残り時間10分を切ったころだった。J2リーグ第16節の一戦。千葉は清水エスパルスの攻撃に対し、身体を張ったプレーで得点を許さず、後半42分に途中出場の米倉恒貴がゴール。劣勢の展開となり我慢の時間帯が長く続いたが、それに耐え抜きワンチャンスをモノにして勝ち点3を奪取した。

 千葉がホームに迎え撃った清水の攻撃のキーマンは言うまでもなく乾貴士である。攻撃のほとんどが乾を経由して行われ、中盤の中央でタクトを振るこの役割は、彼が得意としているポジションでもあり、その能力が存分に発揮されることになる。

 乾のプレーはこれまで何度もカメラのファインダーを通して見てきたが、相変わらず驚かされるのはボールを受けてから攻撃へと転じる動きが俊敏なところだ。目指すゴールを背にして味方からボールを受けても、素早く180度ターンし攻撃への体勢をすぐに作ることができる。たとえ背後に敵がいても、巧みなボールタッチでマークを外し、相手ゴールへと向きを変えられるのだ。

 この技術はゴールへとつながる勝敗を決定付けるようなプレーではない。だが、ゲームメーカーである乾がボールを受け、リズム良くプレーすることで、チーム全体の展開にも波及し、攻撃がスムーズとなるのだった。

 ただ、高い基本技術を武器にチームを牽引する乾にも弱点がないわけではない。年齢を重ねてきた今でも技術面での衰えはそれほど見られないが、やはりスタミナには難がある。前半は清水の攻撃を果敢にリードしていたが、後半に入ると時間の経過とともに乾がボールに絡む場面が少なくなり、併せて清水の攻撃の勢いも失速していった。

 後半21分に乾がピッチを去ると、千葉にとってはここからが勝負となった。

 清水はそれまで低迷していたチームの指揮を秋葉忠宏監督へと委ねると、次々と勝利を積み重ねリーグの順位を上げることに成功する。しかも、ただ勝つのではなく、勝利したスコアが示しているように、驚くほどの得点力を発揮するチームへと蘇らせた。

 千葉にしてみればこの圧倒的な攻撃力を警戒しないわけがなく、ホームとはいえ守備重視の構えで試合に臨んだ。試合は劣勢の展開となるが、それは想定内と言わんばかりに気持ちで負けることなく随所でタイトな守備を見せていく。得点源のチアゴ・サンタナには、時に2人がかりのマークで仕事をさせずゴールを死守した。

 千葉は高い集中力と厳しいプレスで劣勢の展開を凌いでいくと、自分たちのサッカーに自信が持てたのだろう、試合も終盤になると反撃の機会も見られるようになっていった。そして残り3分となった試合最終盤で執念のゴールを挙げ、秋葉監督就任以来、勢いに乗る清水にストップをかけたのだった。

 試合後、ゴール裏のサポーターたちとともに勝利に沸いた千葉の選手たち。攻撃力のある清水に対し、耐えた先に勝利を見た彼らの心のなかには1勝以上の価値がもたらされたように感じられた。見事にゲームプランを遂行したことによって、たとえ試合内容で負けても、勝利することができるのだという自信が生まれたように思う。

 ゴール決定力の向上など課題はあるが今後、J1昇格に向けて巻き返しを狙う千葉にとって、清水撃破はチームに勢いと自信を付ける大きな1勝となったのではないだろうか。

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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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