清水から欧州挑戦の原輝綺、着実な前進と募る焦燥「慌てちゃいけないけど…」「まだもがいてる状況」【現地発コラム】

グラスホッパーへ期限付き移籍した原輝綺(写真は清水在籍時)【写真:Getty Images】
グラスホッパーへ期限付き移籍した原輝綺(写真は清水在籍時)【写真:Getty Images】

清水からグラスホッパーへ移籍した原輝綺、途中出場後の失点回想「精いっぱいだった」

 MF原輝綺が清水エスパルスからスイス1部グラスホッパーにレンタル移籍して4か月ほどが経った。加入直後に肩を負傷して、戦線離脱していたこともあって出遅れていたが、リーグ第27節ヤングボーイズ戦(0-2)、第28節シオン戦(1-3)では、どちらも後半開始から左サイドバック(SB)として途中出場を果たしている。

 取材に訪れたシオン戦は、前半39分にメリタン・シャバーニが一発レッドで退場となったうえ、前半アディショナルタイムに相手に先制ゴールを許すという苦しい展開での出場。後半開始直後にはカウンターから原のサイドを崩されて、2失点目。一時はコーナーキック(CK)から1点を返したものの、後半36分に3失点目を喫して1-3で敗れ、9位チーム相手に痛い敗戦となった。

 試合後のミックスゾーンで原は落ち着いた様子で試合を振り返ってくれた。

「1人少なくて、プラス1点追ってる状況なので、ああいう試合になるのはしょうがない。入りからちょっと自分も点を取りに高い位置から入ったことで、ちょっと自分のスペース空けてしまった。そこはもうちょっと工夫が必要だったかなと思いますけど、良い姿勢で臨めたんじゃないかなと思います」

 失点シーンは味方のボールロストからグラスホッパーが陣形を整える前に、原のサイドを突かれたところから生まれた。スペースに抜け出してきたケビン・ブアに一度は追い付き、それ以上崩されないような対応を図ったが、ニアポスト際に出された鋭いグラウンダーのクロスをジョバンニ・シオにねじ込まれてしまった。センターバックの鼻先でのダイレクトシュートだったが、この失点シーンをどのように原は見ているのだろうか。

「そもそも相手のほうが、自分より高い位置にいるところからスタートだった。後追いのような形でなんとか対応しましたけど、もうその時にはスピードに乗られているので飛び込めない。カットインさせずに縦に行かせてコーナーに逃げるか、マイナスへのコースはなるべく自分が消して。センターバックに向かっていくボールだったら、そこはなんとかあとはお願いって感じでやりましたけど、あれができる精いっぱいだったと思います。やっぱり最初のポジショニングのところですね」

見せ場を創出「ああいうところをしっかり決め切れる選手にならないと」

 グラスホッパーは2点を追う展開になったが、1人少ないながらにチャンスメイクが見られ、原も好機に次々と絡んでいく。左から立て続けにクロスを上げ、川辺駿からのパスを受けてゴール前の味方に処理しやすい柔らかいパスで起点となる。後半18分には相手2人と対峙しながら粘り強くCKを獲得し、このCKからの得点が生まれた。

「1対1になったら積極的に仕掛けようとか、最後できるだけゴール前に顔を出そうとはしました。上がったらしっかりCKを取るとか、シュートでやり切ろうと思ってましたね。コーナーを取れて、それから点を取れたっていうのは良かった。うちにはヘディングの強い選手が多いので」(原)

 最大の見せ場は後半34分に訪れた。タイミングのいいオーバーラップから完全にフリーで抜け出し、ペナルティーエリア内から右足でファーポストへシュートを狙ったが、ボールはわずかに枠の右へ外れた。

「ファーストタッチが自分の思ったところよりも左に流れて(懐に入ってしまった)。もう少し中にふっと入っていけるようなトラップができれば、簡単にファーに流せてたと思うんですけど。気持ちボール1個分ぐらい左に来たので、身体を回しながらファーに打ったんですが、ちょっと狙いすぎて、枠は捉えられなくて。ああいうところをしっかり決め切れる選手にならないといけない。そうじゃないと勝負強い選手になれない」(原)

確かな手応えを掴む原「自分の実力を早く出せるようになりたい」

 原の得点とならなかったのは残念だったが、1人少ない状況でこの日最大のチャンスに顔を出したというのは間違いなくプラスポイントだろう。

 その後1点を加点したシオンに結果として1-3で敗れたが、その後も原は左サイドから何度も好機を演出し、今後に向けて小さくないアピールができている。勢いで走りがちなグラスホッパーの攻撃のなかで、原のところでリズムが生まれており、味方が次のプレーに移りやすいパスで起点となる働きは、チームとしても重要な要素になってくるはずだ。

「慌てちゃいけないけどやっぱり早く慣れて、自分の実力を早く出せるようになりたいと思う。でも思いすぎて空回りというのもあるので。個人としてはまだもがいてる状況というのは変わらないですけど、目標として何かしら自分の中できっかけを掴んで、自分の中で起爆剤になるようなものを感じ取れたり、周りから学んでいけたらと思います」

 少しずつ掴んでいる手応えを手放さずに実感としていくためにも、練習からの取り組みを大切にし、訪れる出場機会でチームを勝利に導く活躍へとつなげていきたい。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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