序列は下がるどころか価値は上昇 アーセナル冨安の“現在地”と見据えるリーグ優勝へのビジョン

「残されたリーグ戦の2試合でしっかりと勝たないといけない相手」

――今日(シティ戦)の動きを見る限り、もう怪我の影響はない?

「はい、気になることなくやれています」

――先週(現地時間1月22日)はマンチェスター・ユナイテッドFWマーカス・ラッシュフォード、今週はシティMFジャック・グリーリッシュというイングランド代表の“強くて・速くて・上手い”選手と戦った。健闘したと思うが、個人的な感想は?

「いや、今日も結構やられましたし、もうちょっと(ボールを)取りに行く守備をしなくてはいけないなということを改めて感じました」

――チームにとって久々の敗戦となったが、今日の試合を振り返ると?

「もちろん僕たちは勝ちにいったわけなので、本当に残念な結果です。それにリーグ戦では1位と2位という関係で、優勝を目指す以上、このライバル関係は最終節まで続くと思います。そういう意味では(今日の直接対決を)勝っておきたかったです。残されたリーグ戦の2試合でしっかりと勝たないといけない相手だなと思います」

――やはり敵はシティという意識?

「うーん、でも1試合1試合やっていくしかない。シティ戦まではまだ試合がありますし(現地時間2月15日/ホーム)、1個1個、試合をやっていくだけなかと思います」

 時間にして2分にも満たなかったインタビュー。とはいえ、語られた言葉からはアーセナルでの“充実”が垣間見えるように思う。

 まず、現在の冨安にとって最大の敵と言えるのが故障だろう。イタリア1部ボローニャ時代から左右ふくらはぎの負傷をはじめ、筋肉系のトラブルに悩まされている。その点で「(怪我の影響を)気になることなくやれています」というのは朗報だ。

 ラッシュフォードやグリーリッシュ相手のパフォーマンスに関するコメントも興味深い。相手についていくのではなく、“ボールを奪い取る”ところまで守備のイメージが膨らんでいるのは、フィットネスへの不安がないからこそだろう。

 さらに、シティとのリーグ優勝争いも最終節まで続くと見据えている。それは、「絶対に優勝する」という強い意志の表れでもあるだろう。それに自らのクラブを「僕たち」と表現するのもいい。チームメイトとの絆の強さを感じ、クラブ愛さえにじみ出ている。

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森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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