J2リーグ補強動向から見る「勢力図」 清水&磐田の“2強”ではない?…群雄割拠の新シーズンを占う

昨シーズン大躍進の熊本は主力の多くが流出も…若手アタッカーに期待

 清水、磐田、岡山、仙台、山形、大分に続いて、昨季9位の東京ヴェルディ、10位の千葉、11位の長崎、そしてスペインのレアル・ソシエダで分析担当だったベニャート・ラバイン新監督を迎えた徳島ヴォルティスが上位争いに加わってきそうだ。とりわけ、FW柿谷曜一朗の徳島帰還は最大級のビッグニュースだ。名古屋ではハードワークを求められたが、より決定的な仕事に集中できるメカニズムを構築できればシーズン10得点10アシストする能力はある。

 新鋭の濱崎芳己監督のもとでリスタートを切る水戸ホーリーホックも浦和レッズからMF武田英寿、横浜FCからMF安永玲央など、ここからブレイクが期待される若手が多く、大躍進もあり得る。また、昨シーズン天皇杯王者のヴァンフォーレ甲府も18位から昇格圏内にジャンプアップするポテンシャルは十分。やはりAFCチャンピオンズリーグ(ACL)に参加できるということもあり、主力の退団を抑えられたのは大きい。そしてJ2では規格外でしかないFWピーター・ウタカ(←京都)や攻撃面で違いを作れるMF武富孝介(←京都)、パスセンスに優れたMF佐藤和弘(←松本山雅FC)が加わった。堅守速攻に定評のある篠田善之新監督が、J2上位のタレントをどう組み上げていくか。後半にはACLも入ってくるが、まずはJ2でのパフォーマンスを見守りたいところだ。

 名塚善寛監督が3年目の山口はMF小林成豪(←大分)、MF田中稔也(←ザスパクサツ群馬)など実力者に加えて、MF矢島慎也(←大宮アルディージャ)という真の主軸になり得るビッグタレントを獲得しており、パリ五輪世代のMF松橋優安(←東京V)も面白いタレントだ。そして川崎からはFW登録ながら2列目で違いを作れるFW五十嵐太陽が育成型期限付き移籍で入り、中盤の面白さはJ2屈指だ。あとは現役引退し、社長に就任した渡部博文氏の抜けた最終ラインをどう埋めていくか。前線は昨年の大半を棒に振った19歳のFW河野孝汰に期待が懸かる。

 昨シーズン大躍進を果たした熊本はFW髙橋利樹(→浦和)をはじめ主力の多くがいなくなり、下馬表では戦力が大きく下がると見られるかもしれない。しかし、中盤の主軸を担ったMF平川怜が残留し、キャプテンマークを任されることに。DF岡崎慎(←FC東京)やMF大本祐槻(←FC琉球)など実力者が加わったが、大木監督のもとで、大化けする期待が高いのは栃木から加入のMF松岡瑠夢だ。また16歳のFW道脇豊は将来A代表も狙えそうな超逸材だ。前線の核がいなくなった状況が、逆にそうした若手アタッカーには絶好のチャンスになるかもしれない。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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