神村学園FW福田師王が交わした青森山田“10番”との約束 涙のエースが明かす敗者への言葉「俺らが優勝するから」

青森山田のFW小湊絆【写真:徳原隆元】
青森山田のFW小湊絆【写真:徳原隆元】

敗戦の理由には「FWの差」を自身の口から吐露

 青森山田(青森)のFW小湊絆が涙ながらに、神村学園(鹿児島)FW福田師王と試合後に交わした約束について語った。青森山田は、1月4日に行われた第101回全国高校サッカー選手権大会準々決勝で神村学園に逆転負け。大会2連覇を逃した試合後のことだった。

 小湊と福田は試合後に会話。その際に、福田が優勝を約束してくれたと言う。

「俺ら(青森山田)の2連覇という目標はここで途絶えましたが、神村が、師王が、俺らが優勝するからと言ってくれて」

 涙をこらえながら話す小湊は「神村が優勝してくれたら、自分たちの方がここまで1年間戦ってきたものも少しは報われると思いますし、そういった意味でやっぱり彼らに自分たちの、この先の勝利を託しました」と言葉をつなげた。神村が優勝すれば、青森山田のこの敗戦の苦しみが多少は和らぐことになる。福田が、敗者の立場に寄り添うことができる選手だとわかるやり取りだった。

 なお、小湊は福田とのプレーのレベルの違いにも言及している。

「やっぱり今日の試合を見てわかるとおり、FWの差で負けたと思うので。福田師王選手はワンチャンスをものにしましたけど、俺は2回も3回も外して。結局そこの差で負けだと自分は思うので」

 試合を通し、福田との得点力の違いを痛感させられた小湊は、敗戦の責任を背負い、試合後に黒田剛総監督と正木昌宣監督とに「俺が10番で、チームを勝たせられなくてすみません」と伝えたとのこと。その言葉を受けた両者から「絶対にプロになるって今ここで約束しろと言ってもらえて」と口にして「僕はこの悔しさを一生忘れることはないと思いますし、黒田監督からも正木監督からも言われた、プロになるという言葉を背負って、青森山田の10番を背負って、この先大学4年間ありますけど、そこでの成長の糧につなげていけたらなと思います」と力強かった。

 なお小湊は法政大に進学。大学での目標を“試合を決定付けられるFW”と設定する。

「試合を決定付けられるFWじゃないですが、1人いるだけで、チームの勝敗が左右するような選手になりたいなと思います」

 試合の中で体感させられた福田との決定力の差を胸に、4年後のプロ入りに向けて小湊のサッカー人生はまだまだ続いていく。

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江藤高志

えとう・たかし/大分県出身。サッカーライター特異地の中津市に生まれ育つ。1999年のコパ・アメリカ、パラグアイ大会観戦を機にサッカーライターに転身。当時、大分トリニータを率いていた石崎信弘氏の新天地である川崎フロンターレの取材を2001年のシーズン途中から開始した。その後、04年にJ’s GOALの川崎担当記者に就任。15年からはフロンターレ専門Webマガジンの『川崎フットボールアディクト』を開設し、編集長として運営を続けている。

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