【W杯|この試合この1枚】セレソンが見せたフィジカルのぶつかり合い 信頼を勝ち取るための“暗黙の了解”

カメルーン×ブラジルでは、激しい球際の攻防が繰り広げられた【写真:徳原隆元(FOOTBALL ZONE特派)】
カメルーン×ブラジルでは、激しい球際の攻防が繰り広げられた【写真:徳原隆元(FOOTBALL ZONE特派)】

ブラジルではまず仲間から認められる必要がある

 現地時間12月2日、ルサイル・スタジアムで行われたカタール・ワールドカップ(W杯)グループG第3戦のカメルーン代表対ブラジル代表。アフリカ対南米が対決した場合、展開されるサッカーのイメージはフィジカル対テクニックだ。

 ブラジルの特徴は言うまでもなく、至高のテクニックを武器に、華麗なサッカーをピッチで披露するスタイルである。しかし大国ともなれば、すべての面でハイレベルであり、フィジカルプレーでも存分にその強さを発揮する。

 彼らスーパーテクニシャンが見せるフィジカルファイトは、何も鍛え抜かれた肉体的な強さだけでアプローチするのではない。間合いを計り、ボールを奪取する状況を素早く察知し、実行する。鋭いサッカー感覚に裏付けされたプレーで相手と勝負するのだ。その動きはまさにボールハンティングという言葉が似合う。

 さらにブラジルは自分がプレーするエリアでミスをすると、そのミスを自分で挽回しなければならないという暗黙の了解がある。もちろんどのチームも自分のミス、例えばボールを奪われたらそれを取り返すというプレーは鉄則だが、その思いはブラジルの場合ひと一倍強いのだ。

 なにより自分の課された仕事を的確にこなせなければ味方から信頼されない。至高のレベルにあるセレソン(ブラジルの愛称)は、そこで生きていくためには、まず仲間から認められなければならない独特の雰囲気があるのだ。

 仲間から信頼を得るためには、攻守にわたって相手の後塵を拝してなどいられない。おのずとそのプレーは絶対に相手に負けるわけにはいかないという強い気持ちから激しくなる。危険を察しプロフェッショナルファウルで止め、相手に詰め寄られても「だからどうした」くらいのまったく一歩も引かない強い意志がハイレベルなブラジルの根幹ともなっている。

 そしてこの試合、カメルーンは自らの肉体の強靭さを武器に、ブラジルは研ぎ澄まされたサッカー感覚を頼りに、局面では激しい攻防を繰り広げることになる。スパイクを踏まれて脱がされても怯まず、相手の猛烈なチャージに耐え、ボール保持者に果敢にアタックしていった。

 結果はアディショナルタイムにゴールを決めたカメルーンの劇的な勝利で幕を閉じたが、ピッチでの攻防を切り取った写真はその激しさを物語っていた。

(FOOTBALL ZONE特派・徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)



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FOOTBALL ZONE特派・徳原隆元 / Takamoto Tokuhara

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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