【W杯】日本代表、スペイン戦の「攻略ポイント」 “理想形”は5-4-1システム…パスワークへの“付き合い過ぎ”は厳禁

スペインが狙うのは、ライン間やセンターバックとサイドバックの間に生じるスペース

 スペインのルイス・エンリケ監督や前日会見に登壇したGKのウナイ・シモンは日本のディフェンスを「ハイブロック」として警戒している。つまりは4-4-2のコンパクトなブロックを組んだまま、最終ラインを押し上げて、機を見てスイッチを入れていくやり方だ。東京五輪の準決勝でスペインと対戦した時の基本的な守り方だが、4-4-2はスペインのようなワイドにボールを握れるチームが相手になると、6バックになってしまいやすい。

 1つの方法としては4-4-2と4-1-4-1を守備の高さに応じて使い分ける方法だが、森保一監督が率いる日本はそこまでフレキシブルな可変式のディフェンスをやってきていないので、ここでトライするにはリスクがある。それならばできるだけ4-4-2で我慢して、本当に苦しい時は6バックで耐えて、押し戻せるタイミングを待つというプランのほうが現実的かもしれない。筆者としてはやはり5バックを固めて、じわじわプレッシャーをかけて行く方法が継続的に守れる方法と見ている。

 大事なのはスペインのパスワークに付き合い過ぎないこと。正確にパスをつなぎながら、ドイツ以上に目まぐるしくポジションを変えてくるが、真面目に対応しようとするほど、1つでも外されると背後を取られて、無理にカバーしようとして、必要以上に体力を消耗させられる。スペインは多彩にボールを回しても、結局はライン間やセンターバックとサイドバックの間に生じるスペースを狙ってくる。ボランチが危険なコースは切りながら、やや強引に通そうとしたところを引っ掛けたい。

 スペインが一番チャンスになるのは一度ボールを失った瞬間に即時奪回したところから、ディフェンスのズレを突いてのフィニッシュだ。左ウイングの主力であるFWダニ・オルモなどはこれが抜群にうまい。スペインがボールを握る時間が長いために、ボールを奪えた時に余裕がなく、的確な判断ができないというのが一番まずい。ただ、スペインのプレスを外せれば一気にスペースでボールを運んでチャンスにすることができる。

 90分の中ではボールを握れる時間も所々であるはずなので、そこでいかに勇気を持って攻勢をかけるかも重要だが、基本はカウンターからの少ないチャンスを決め切りに行くなかで、MF伊東純也などアタッカー陣が、スピードを発揮できるか。スペインのルイス・エンリケ監督にはブラジルと準々決勝での激突を避けるため、意図的にランナーアップ(2位通過)を狙っているのではという質問がスペインのメディアから出たが否定していた。

 日本も他会場の結果によってはスペインと引き分けても突破できるが、基本は勝ちに行くしかない。一方のスペインは引き分けで突破が決まるので、80分過ぎで同点なら試合をそのままクローズしにくる可能性もある。ただ、そうした状況に“落とし穴”があるのは日本もコスタリカ戦で味わった。無失点を続けながら、後半早い時間までにリードできれば理想だが、焦りから中途半端なところでボールを奪われて、ショートカウンターで仕留められないようにしたい。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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