カタールで実感したW杯開幕戦撮影の難しさ スタジアムに入れず外周待機…カメラマンの長い1日

花火が打ち上げられるアルバイト・スタジアム【写真:徳原隆元】
花火が打ち上げられるアルバイト・スタジアム【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】開幕戦は敷地内にも入れず待機も、取材許可のメールは来ず

 1978年アルゼンチン大会から連続でワールドカップ(W杯)を取材している友人のベテランカメラマンでさえも、開幕戦を撮影できたのは4回しかない。世界中から多くのカメラマンが集結し、ピッチを囲むようにズラリと並びカメラのレンズを向ける。これがW杯の世界だ。

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 我々、フリーランスという立場や、試合をする出身国の人間かどうかなど、決勝と同様に開幕戦も簡単には写真をもって表現することは難しい。なにより撮影できないのだから。今回の開幕戦はピッチレベルでの撮影を申請したが、それがかなわず、欠員が出た場合のウェイティングリストに再度申請することになった。朝9時にメインプレスセンターまで足を運んで申請し、撮影の機会を待つことに。撮影許可の結果は試合2時間前にメールで連絡が来るというシステムとなっていた。

 2002年日韓大会では、昵懇(じっこん)にしていたブラジル人カメラマンが母国の試合を申請したにも関わらず、何かの手違いでリストに名前がなかったことがあった。当然、本人は焦る。結局、申請者のリストに名前がないためウェイティングへと回されることになる。撮影許可は試合開始2時間前に発表となったため、とりあえず落ち着いてプレスルームの席で待とうと仲間のブラジル人たちとなだめたが、彼は4時間ほどずっとウェイティングリストの用紙に自分の名前を書いたデスクの前で、ずっと待っていたということもあった。

 だが、インターネットという革新的な技術によって時代は変化し、すべてのカメラマンがオンラインで管理されているのが近年の大会だ。

 開幕戦が行われるアル・バイト・スタジアムは今回使用される8つのスタジアムのうち、中心地から向かうにはもっともアクセスしにくいところにある。そのため撮影許可の成否のメールを受けてから現地に向かっては間に合わない。そこでまず会場に行くことにしたのだが、ここでオンラインの壁に阻まれる。

 スタジアムのゲートでアクレディテーションカードにあるQRコードを係員に読み取ってもらうと、取材許可が下りていないため敷地内に入ることができないということだった。プレスセンターも敷地内にあるため、スタジアムはおろか待機する場所さえない状態に置かれた。

 仕方がないので許可の結果を持つ、同じ境遇のカメラマンたちと共にスタジアムの外周で待機することにした。だが、欠員が出なかったのか、あるいは出ても数名だったのか待てど暮らせど、同じ場所で待機していた15人ほどのカメラマンの誰にもメールが来ることはなく、カタール大会の開幕戦はここに終わった。

 そうした苦しい状況で、なんとか開幕戦の雰囲気を伝えようとシャッターを切ったのがトップ画面の1枚だ。

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FOOTBALL ZONE特派・徳原隆元 / Takamoto Tokuhara

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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