ジュビロ磐田、困難なJ1残留ミッションは可能? 運命のラスト2試合、奇跡のシナリオを読み解く

他クラブの動向が絡む複雑な残留争い、最下位・磐田の最低条件は?

 数字上、降格の可能性を残すのは12位の北海道コンサドーレ札幌から下の7チームだが、勝ち点35の13位湘南ベルマーレは得失点差が-12なので、同-23の磐田が連勝、湘南が連敗で勝ち点が並んだとしても、よほど大差の結果でなければ湘南を上回ることはできない。京都とアビスパ福岡が勝ち点34、清水とG大阪が同33なので、京都(得失点差-8)と福岡(同-10)は勝ち点1でも取れば、磐田に追い抜かれることはない。清水とG大阪は1分1敗なら、磐田は逆転できる。

 特にG大阪、京都とは直接対決があるので、この2試合で勝つことを条件に、G大阪は最終節の鹿島アントラーズ戦(アウェー)で引き分け以下、京都は第33節のセレッソ大阪戦(ホーム)で負ければ、磐田が逆転する芽は残ることになる。静岡ダービーを戦った清水は第33節がホームの鹿島戦、最終節がアウェーの札幌戦なので、実は勝ち点を取るのがなかなか難しい。

 ただ、6位の鹿島はリーグ戦7試合勝利がなく、わずかながら降格の可能性を残す12位の札幌は第33節のサンフレッチェ広島戦に勝利して残留を確定させた場合、最終節の清水戦をどういう心理状態で迎えるのか読みにくい。清水ホームだった開幕戦は札幌がほぼ圧倒しながら1-1の引き分けだった。清水は監督も代わり、主力メンバーにも入れ替わりが起きているが、札幌でどのような戦いを演じるだろうか。

 もう1つ、残留争いのライバルであるアビスパ福岡は残り2試合がホームで7位の柏レイソル(第33節)、アウェーで8位の浦和レッズ(最終節)と、対戦カードだけならおそらく一番苦しい。ただ、前半戦は上位争いに絡んでいた柏が下降線を辿っており、ここ8試合は勝利がない。9月10日の浦和戦で4失点してから3試合で1失点と守備は立て直しているが、得点も1ゴールと湿っており、3週間の中断でどれだけプレー強度が戻ってきているかが問われる。長谷部茂利監督が率いる福岡はFWフアンマやFWジョン・マリなど強力な攻撃カードも揃えているので、こうしたギリギリの戦いで強さを発揮してくるかもしれない。

 いずれにせよ、磐田は2連勝しないことには残留の希望が見えてこない。G大阪は松田浩監督が途中就任してから4-4-2のタイトな守備ブロックを構築しているが、守備自体は清水にも通じる部分がある。そして得失点差で清水に逆転されたG大阪も、最下位の磐田に勝ち点3を取れないと、鹿島戦を待たずして風前の灯火となってしまうので、点は取りに来るはず。スリリングな攻防が予想されるなかで、磐田が上回れるかがポイントになる。

 最終節の相手となる京都は“昇格組”なので、元々の実力も接近している。その前のC大阪とのホームゲームでどういう結果になっているか。京都がC大阪に勝った場合はもちろん残留に大きく前進しているが、引き分けでも、現在の得失点差が-8であることを考えると、少なくとも磐田は逆転困難になる。この時点で湘南、福岡、清水の勝ち点がどうなっているかでも、京都の残留プランは変わってくるが、磐田はG大阪を叩いて勢い付いてホームの最終節に向かうしかない。

 非常に困難な残留ミッションではあるが、可能性はまだ十分に残されているので、その最終結果を待って、改めて磐田の2022シーズンを総括したいと考えている。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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