鎌田大地の開幕戦出番なしは長谷部も「びっくり」 EL王者フランクフルトが三位一体で臨む“新たな冒険”

好調・鎌田をベンチスタートの采配は「解せない」

 スタジアムに着き、メディア控室に入ってゲームのメンバー表を見ると、長谷部誠と鎌田大地がベンチスタートになっている。今季公式戦初戦のDFBポカール1回戦マグデブルク戦で2ゴールをマークして4-0の勝利に貢献した鎌田が控えなのは解せない。

 マグデブルク戦での鎌田はオリバー・グラスナー監督からボランチで起用されて新境地を開拓した感があり、新戦力のマリオ・ゲッツェがインサイドハーフでプレーすることで両者の共存に1つの筋道ができたように思えた。しかし、グラスナー監督は苦戦が予想されるバイエルン戦で攻撃的な鎌田ではなく、チームキャプテンで負傷明けのドイツ人MFセバスティアン・ローデとスイス代表MFジブリル・ソウの2ボランチを選択した。

 ホームチームの指揮官が打った慎重策はしかし、ピッチで効果を発揮しなかった。試合開始から僅か5分、ドイツ代表MFジョシュア・キミッヒが直接FKから技巧的なグラウンダーシュートを決めて早くもバイエルンが先制する。フランクフルトのドイツ代表GKケビン・トラップは背後に陣取るフランクフルトサポーターが焚いた発煙筒の煙に視界を遮られてキミッヒのシュートに反応するのが遅れてしまった。サポーターの盛り上がりが逆にチームの足を引っ張ってしまうとは、なんとも皮肉だ。

 ベンジャマン・パバールが強烈な右足シュートで2点目を決めると、スタジアムが騒然とした雰囲気に包まれる。逆にフランクフルトはブラジル人DFトゥタのヘディングがゴールバーを直撃し、リンドストロムの対角シュートがゴール左へ外れるなどして好機をものにできない。バイエルンの新戦力であるセネガル代表FWサディオ・マネ、19歳の“新星”FWジャマル・ムシアラ、チームの“重鎮”FWトーマス・ミュラーが次々とゴールを決め、前半終了時点でスコアは5-0。ハーフタイムにはフランクフルトサポーターの1人がピッチへ乱入し、それをスチュワードたちが止めたのを見たゴール裏のほかのサポーター数十人が激昂して乱入者を救うためにピッチへ雪崩れ込むなど、異様な混乱も起こった。

 大量リードを奪ってペースダウンしたバイエルンに対し、フランクフルトのグラスナー監督は後半開始からドイツ人DFクリストファー・レンツ、クロアチア代表MFクリスティアン・ヤキッチ、フランス人FWコロ・ムアニの3人を投入し、ムアニが移籍後初ゴールを決めて1点を返した。

 しかし勢いは持続しない。その後、コスティッチに代わってドイツ人FWファリデ・アリドゥ、そして最後の5人目でトゥタに代わって長谷部が投入された時点でウォーミングアップしていたフランクフルトの控えメンバーがベンチへ引き上げ、試合はムシアラがホームチームの息の根を止めるゴールで締め、6-1でバイエルンが快勝した。

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島崎英純

1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。

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