森保ジャパン、W杯へ“アピール成功”のE-1メンバー 9月の欧州遠征に「最も近い位置」にいるのは?

パリ五輪世代の藤田をカタールW杯のメンバーに加えるメリットは小さくない

 J1の首位を走る横浜F・マリノスからは大量7人が参加した。1人1人がしっかりと自分の持ち味を出しながら、マリノスで積み上げたユニットとしてのコンビネーションが、E-1でも存分に発揮された。最終予選の“川崎勢”ではないが、このE-1優勝は”マリノス勢”の活躍なくしてあり得なかった。逆に誰か1人をカタールW杯の候補として推すのは難しいが、特筆すべき存在はMF藤田譲瑠チマか。

 相馬のゴールをアシストしたシーンにも見られる通り、中盤にありながら“ボックス・トゥ・ボックス”の動きでバイタルエリアまで入って行って、決定的な仕事ができる。20歳ながら、これだけハイレベルに機動力と技術、瞬間的なアイデアを兼ね備えたタレントはなかなか見当たらず、ここから数か月でさらに成長していきそうな期待感もある。

 積極性ゆえのミスも多く、E-1では当然、MF岩田智輝、MF水沼宏太、FW西村拓真、DF小池龍太といったマリノスの仲間に助けられた部分も大きい。それでも昨年の東京五輪で、直前合宿のサポートメンバーとして参加しながら、全く物怖じをせずにガツガツ行きながら声まで出していたメンタリティーを考えても、パリ五輪世代の藤田をカタールW杯のメンバーに加えるメリットは小さくない。

 ただし、藤田には9月の欧州遠征を前に、試金石となる大会がある。ラウンド16に勝ち上がっているAFCチャンピオンズリーグ(ACL)だ。ヴィッセル神戸や浦和レッズの選手たちもそうだが、Jリーグの中でも国際舞台があるのはアドバンテージで、8月に準決勝まで一気に消化する大会で、岩田や西村もそこで圧倒的な存在感を示せば、滑り込みのアピールになるのは間違いない。

 そのほか、大会開幕前に掲げていた3得点を記録して、ストライカーとしての決定力を見せつけたFW町野修斗(湘南ベルマーレ)、3試合すべてに起用されて随所に高い技術とセンスを発揮したMF脇坂泰斗(川崎フロンターレ)、スペイン2部のウエスカに移籍が決まったMF橋本拳人などは、今後の所属クラブでの活躍も加味されて欧州遠征のメンバーに招集される望みはある。

 GKは谷、大迫敬介(サンフレッチェ広島)、鈴木彩艶(浦和レッズ)と昨年の東京五輪と同じメンバーで、それぞれが1試合に出た。やはり韓国戦で起用された谷が1歩リードしていると見るが、権田やシュミット・ダニエル(シント=トロイデン)、川島永嗣(ストラスブール)がいる中で、若手から1人でも食い込んで行けるか。浦和で西川周作の控えになっている鈴木もACLで起用される可能性があり、そこでの活躍が大きなアピールになることは間違いない。

河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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