森保ジャパン、W杯へ“アピール成功”のE-1メンバー 9月の欧州遠征に「最も近い位置」にいるのは?

プレースキッカーでも存在感の相馬は、26枠拡大の恩恵を受け得る1人

 相馬の強みはサイドを上下動できる運動量はもちろん、個人で仕掛けて決定的なシーンを生み出せることであり、そうしたタイプはフルメンバーでもFW伊東純也(ヘンク)やFW三笘薫(ブライトン)など限られる。ここに相馬が加わることで、攻撃のオプションが増えて、バリエーションが広がるはず。東京五輪では三笘と競争しながら、相馬がスタートから出れば三笘が、三笘が先発すれば相馬が強力なジョーカーとしてベンチに控える構図だっただけに、森保監督もイメージしやすいだろう。

 しかも、香港戦では直接FKからゴールを決め、韓国戦で佐々木の得点をアシストしたことから、日本代表の課題になっているセットプレーのキッカーとしても有力候補になってくる。登録枠が従来の23人から26人に増えるため、その“3ピース”の一人として加わるにはふさわしいタレントだ。

 ただ、所属する名古屋は現在リーグ13位と残留争いの最中にあり、3-5-2の左ウイングバックを担う相馬も、1得点0アシストと目に見える結果を残せていない。もちろん名古屋は残留で満足して良いクラブではなく、代表で得た自信をJリーグに還元する形で、チームを躍進に導く活躍が期待される。

 その相馬に次ぐ候補の1人は佐々木か。CKからのゴールも素晴らしかったが、今回の韓国では最も危険だったFWオム・ウォンサンを完璧に押さえ込んだだけでなく、前半にカウンターから受けたピンチにも的確なカバーとブロックで救った。代表で課題だった攻撃面も、今季から広島の指揮を執るミヒャエル・スキッベ監督の指導で、ビルドアップがアップデートされていることを印象付けた。

 中国戦ではシャドーを本職とするMF森島司(サンフレッチェ広島)が慣れない4-2-3-1の左サイドハーフを担ったこと、右サイドのDF小池龍太(横浜F・マリノス)が高めのポジションを取ったことで、攻撃時は3バックの左のようなポジションになり、攻撃参加ができなかった。そうした視点からの厳しい評価もあったが、韓国戦では純然たるサイドアタッカーの相馬を後ろからサポートしながら、機を見て攻撃に参加する形がうまくはまっていた。

 ここから想定されるのはフルメンバーでもMF南野拓実(ASモナコ)のように、中に流れるタイプとの組み合わせだと、佐々木があまり得意ではない外側から追い越す動きが求められてしまう。それよりは三笘や相馬のようなタイプと組んだほうが、後方で守備の強度を発揮しながら、タイミングよく攻撃参加するというプレーを発揮しやすい。森保監督もそうした感触を掴んだはずで、今後の起用法を間違えなければ、同じ国内組の長友が一番手と見られる左サイドバックで十分に勝負できる。

河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング