J1リーグ「上位&下位クラブ」夏の補強ポイント 王者・川崎の“理想の強化”、札幌&磐田に潜む“穴”は?

“パワー不足”が否めない磐田、アタッカーの補強は急務か

■補強ポイント考察(3):北海道コンサドーレ札幌、ジュビロ磐田、清水エスパルス

 下位チームに目を移すと、ガンバ大阪と湘南ベルマーレの積極補強が目を引く。また思わぬ低迷を強いられている浦和レッズもオランダのフェイエノールトからFWブライアン・リンセンを補強しており、前線をどう組み合わせるかが浮上の鍵を握りそうだ。監督交代を経験したヴィッセル神戸も韓国の仁川ユナイテッドからFWステファン・ムゴシャを補強。彼に良質なクロスを供給できる右サイドのMF飯野七聖も鳥栖から加えて、吉田孝行監督がうまく組み込んでいけるか注目される。

 北海道コンサドーレ札幌はタイの新たな至宝とも言われるMFスパチョーク・サラチャートをブリーラムから獲得したが、今季から川崎へ移籍したMFチャナティップのようにハマるかどうかは未知数なところはある。あとは守備がオールコートのマンツーマンに近く、ハードワークをベースとするだけに、怪我の多いボランチのところで即戦力を加えられると理想だ。ただ、やはり札幌も育成型のチームなので、そうした選手層の底上げは若手に期待したいところもある。

 ジュビロ磐田は伊藤彰監督がチームの成長を主眼に、ベースを構築しながら戦うなかで、序盤戦はルヴァンカップで出番を得ていた若手が徐々にリーグ戦で起用されるなど、チーム内の底上げは着実にできてきている。しかし、J1の荒波を乗り越えていくには“パワー不足”が否めず、特に前線はコンディション不良で欠場中のFWファビアン・ゴンザレスに匹敵、あるいは、迫れるアタッカーの補強は急務だ。

 シーズン中に突発性難聴に見舞われたFW大津祐樹は幸いにも完治が伝えられ、すでに練習復帰しているが、右第5中足骨骨折で復帰未定とされるMF山田大記に代わるクリエイティブなアタッカー、サイドから突破力を発揮できるウイングバックは加えたいところ。センターバック(CB)もJ1の強度に耐えられる戦力が欲しいが、あまり多く補強するとチームが崩れてしまう恐れもある。

 CBに関しては、J2栃木SCに育成型期限付き移籍中のU-21日本代表DF鈴木海音を呼び戻すプランも考えられるが、優先順位としては決め手のあるFW、強度のあるセンターバック、突破力のあるウイングバック、クリエイティブな攻撃的MFの順番か。ただし、ウイングバックはDF高野遼の戦線復帰も期待される。山田や高野の状態を見極めながら、いかに効果的な補強ができるかは残留への重要ポイントになる。

 ゼ・リカルド監督が途中就任した清水エスパルスは新戦力云々より、新体制での戦術構築がタスクになっている。そうしたなか、セットプレーのスペシャリストでもあるMF西澤健太が戦線復帰、U-23アジアカップから帰還して以降、公式戦のメンバーから外れていたFW鈴木唯人の練習合流が伝えられるうえ、負傷で離脱していたMFホナウドも回復状態にある。

 ファジアーノ岡山からの復帰が決まったGK梅田透吾、オーストリアのラピード・ウィーンから完全移籍で戻ってきたFW北川航也も含めて、戦力的に下位チームの中では充実している。ただ、個の質と強度の部分では決して安定しているとは言えないディフェンス力を改善しうる、主力クラスのセンターバックが欲しいところではある。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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