欧州挑戦1年目で“キャリアハイ”――元広島MF川辺駿の現在地と新たな気づき「海外では『結果、結果』と言われるけど」

グラスホッパーでプレーする川辺駿【写真:Getty Images】
グラスホッパーでプレーする川辺駿【写真:Getty Images】

【インタビュー】21年7月からグラスホッパーへ移籍、川辺駿が語る欧州1年目

 欧州海外組とは、イングランド、スペイン、ドイツ、イタリア、フランスという、いわゆる欧州5大リーグにいる選手だけではない。それに準ずるリーグでも虎視眈々と次のステップを狙って、成長を遂げている選手は多い。スイス1部のグラスホッパーで活躍するMF川辺駿もその1人だ。

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 2021-22シーズンのリーグ終盤の5月上旬、チューリッヒ郊外にあるグラスホッパーのクラブハウスでインタビューを実施。日本メディアからの取材がほとんどないというスイスリーグにおいて、どのような毎日を送っているのか。本人の声とともに短期連載でお送りしていく。

 サンフレッチェ広島から、スイスリーグ優勝最多の27回を誇る名門グラスホッパーに入団したのは21年7月。今季34試合に出場し、7ゴール3アシストをマークし、主軸として欠かせない存在となった川辺は、自身の今季をどのように受け止めているのだろうか。(取材・文=中野吉之伴/全4回の1回目)

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「ゴール数に関してはキャリアハイで、ゴールに絡めているのはすごく嬉しいです。ラストパスの精度をもう少し上げられたら、もう少しアシストの数も増やせられるかなとは感じています。ただ、まだまだの部分はもちろんありますし、フィジカル的なところはもう少し上げていきたいなと思ってます。あとは監督にもクオリティーをもっと発揮するところを求められます」

「海外では結果を出すことが決定的に大事」なんてよく言われる。ゴールやアシストという結果がマイナスに評価されることはない。監督の志向やチーム状況にももちろんよるものの、欧州サッカーの現場では結果にだけこだわったプレーをする選手を重用する監督は減少傾向にある。

 川辺もそのあたりのバランスに悩んだ時期があった。最初は無我夢中のまま進んでいくが、徐々に慣れてくるといろんなことを考えたり、意識したりする。ウインターブレイク後、
再スタートから5試合ほどは結果にフォーカスしすぎて、あまり自分のパフォーマンスも良くなかったと明かす。

「海外では『結果、結果』と言われるけど、自分の中では結果だけではなく、まずはチームの一員として、どれだけ走って、戦えて、チームのために何ができるかというのが大切だと思いました。そのうえで試合の中にあるチャンスを生かせるか、というところが大事。冬までの半年はできていたことだったから、そこを思い出してどれだけ90分の中でチームのためにプレーできるかの重要さを感じましたし、そうすることでそこからまた点を取れるようになったんです」

「結果」というのはゴールやアシストという数字だけではなく、「チームが求めるパフォーマンスを出す」という前提がなければならない。それがなければ起用してもらえない。起用されなければゴールやアシストも生まれない。そして川辺がグラスホッパーで中心選手として起用され続けているということは、チームが求めるパフォーマンスを発揮し続けていることを意味する。

「監督が求めるサッカーというのは、言葉が全部分かるわけではないですけど、ビデオとか使って説明してくれますし、理解しているつもりではあります。まずはチームとしてどう戦いたいのかを体現するというのは、試合に出るために、最初の出場時間を手にするために大事だと思います。そこにゴールやアシストという結果も伴えば、チームメイト、チームスタッフからの信頼はさらに感じ取りやすくなるのかなと」

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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