森保J、ファインダー越しからも明白だった「逃げのボール回し」 チュニジア相手に見えた限界…W杯へ指揮官はどう立て直すのか

カメラマンの目に映った日本代表の姿とは?【写真:徳原隆元】
カメラマンの目に映った日本代表の姿とは?【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】いつもと違った遠藤の姿、チュニジア戦の光景を見て抱いた思い

 サッカーは選手、スタッフ、レフェリー、記者・解説者、フォトグラファーなど、それぞれの立場から見える世界がある。22歳の時からブラジルサッカーを取材し、日本国内、海外で撮影を続ける日本人フォトグラファーの徳原隆元氏が、日本対チュニジアの一戦を現地取材。カメラマンの目に映った独自の光景をお届けする。

   ◇   ◇   ◇

 カメラのファインダー内にアップとなった伊東純也が険しい表情を見せる。6月シリーズの最終戦となった対チュニジア戦のワンシーンだ。

 日本の背番号14はこの日も切れ味のあるドリブルで、果敢に右サイドを駆け抜けチャンスを演出した。だが、日本はゴール前のラストプレーで精度を欠き無得点に終わる。反対にチュニジアに3点を献上し見せ場も少なく敗れたのだった。伊東の苦い表情は奮わなかったチュニジア戦での日本を物語っていたと言える。

 試合前、テレビのゲスト解説者としてピッチレベルにいた元日本代表の丹羽大輝に雨によるモチベーションへの影響を聞いてみた。

「サッカーは雨の中でプレーすることは当たり前なのでモチベーションへの影響はまったくない」という返事だった。

 彼もまたサッカー選手として生きる人であるからパナソニックスタジアム吹田を濡らす雨など気にしない。笑顔で「一緒に戦います」と言って傘もささずテレビに出演していた。

 しかし、肝心のサムライブルーたちは試合後に笑顔とならず、チュニジアを相手に完敗を喫することになる。試合を簡潔に言うとスローテンポで始まり、日本はチュニジアのハードマークで対抗してくる術中にハマり、そのままエンジンがかからず90分間を終わらせてしまったという印象だ。

 では、写真撮影の視点から試合内容を追ってみる。まず、ボールを持った選手をカメラで追っていくと、ディフェンダー陣が後方でパスを繋ぐ場面が目立った。そして、そのパスは攻撃への足掛かりとなるものではなく、相手の素早い寄せと球際の争いになった時の強さを警戒するように逃げのボール回しとなっていた。効果的な前線へのボール供給が少なくなると中盤から前線にかけても動きが停滞することになる。

 なによりいつものサムライブルーの風景と違っていたのは遠藤航だ。これまでの遠藤には、彼の特徴である相手選手からボールを奪取するプレーに多くのシャッターを切ってきた。だが、この試合ではボールを持った彼が敵に囲まれることになる。遠藤にしてみればマークする側の自分が逆の立場になり、さらに複数のマークを受けることになるとは想定外だったに違いない。

 攻守を繋ぐ役割をこなす遠藤へのマークをはじめとした、チュニジアの相手の長所を消すプレーは当然、日本の前線の選手にも及ぶ。ゴール前を固められ、さらに激しいマークによって自由を奪われ、余裕を失った日本の攻撃陣は、単独による力尽くでゴールをこじ開けようとするドリブルが目に付いていく。単調な個人による単独突破ではファインダー内に写る人海戦術で守るチュニジアの牙城を崩すのは難しく、強引に守備網へと割って入っていくプレーは無謀にも見えた。

 反対に日本の守備はチュニジアの落ち着いたパス回しのリズムに対応できず、ボールを持った選手へマークに付くも厳しさに欠けるシーンが見られた。日本にしてみれば攻守に渡って課題が浮き彫りとなる試合となってしまった。

徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング