日本代表OB呂比須ワグナーはブラジル戦に何を感じた? 森保ジャパンに提唱するスタイル

呂比須ワグナーがブラジル戦で見えてきた森保Jの長所や課題を語った【写真:(C)JFA】
呂比須ワグナーがブラジル戦で見えてきた森保Jの長所や課題を語った【写真:(C)JFA】

【専門家の目|呂比須ワグナー】王国ブラジル相手に「よく守っていた」

 1987年に18歳で来日し、日産自動車にはじまり、ベルマーレ平塚(現湘南ベルマーレ)、名古屋グランパスを含む7つのクラブでプレーし、合計15年間を日本で過ごした呂比須ワグナー氏。1997年には帰化し、日本代表としてワールドカップ(W杯)アジア予選と1998年のフランスW杯本大会を戦った。

 現在は監督として数々のクラブを歴任している彼が、6月6日に国立競技場で行われた日本対ブラジルの親善試合をじっくりテレビ観戦。王国ブラジルとの戦いの中で見えてきた森保ジャパンの長所や課題を語ってくれた。(取材・構成=藤原清美)

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 試合はMF遠藤航(シュツットガルト)がペナルティーエリア内で相手FWリシャルリソン(エバートン)を倒してしまい、PKを献上。これを10番のFWネイマール(パリ・サンジェルマン)に決められ、0-1で敗れた。まず、呂比須氏が感じた試合全体の印象はどうだったか。

「1つ状況を言うと、テレビではピッチ全体を見渡せるような広い画角では見ることができないんだよね。もっと寄りの映像が多いから、例えばラインのコントロールなどの戦術面は会場でしか分からないこともある。

 そういう前提で見たなかで、まず言えるのは、日本は非常によく守っていたということ。守備の時間帯では、マークにかける人数を倍増していたし、フィールドプレーヤーは全員、守備のために戻っていた。実際、試合に負けたくないという意欲が強かった。それにより、非常に安全な試合をしていた。失点したのはただ、ブラジルのクオリティーや個々の才能が、その守備を破ることもある、ということだ」

 日本はボール支配率こそ47.8%対52.2%だったが、シュート数は4対18。枠内シュート数は0対12と大差をつけられた。呂比須氏も物足りなかった点について指摘する。

「ボールを奪い返した時、つまり、守備から攻撃への切り替えの時に、非常に消極的で、ほとんど攻撃に出なかった。攻撃のバリエーションも少なかったし、攻撃の起点の部分で、もう少しちゃんと組み立てても良かったのにと思う。チャンスメイクの段階から、もっと“実際にゴールに迫る”という意図を持ってね。

 だから、フィニッシュも少なかった。攻撃する時には、もっと大胆で、同時に、直接ゴールに到達できるように、無駄を削ぎ落とし、磨き上げられたプレーをしないといけない。サイドバックがオーバーラップしたり、中盤がフィルターの役割をしたり、FWがもっとペナルティーエリアに侵入したり、というようなプレーが、もっと必要だった」

藤原清美

ふじわら・きよみ/2001年にリオデジャネイロへ拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特に、サッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のテレビ・執筆などで活躍している。ワールドカップ6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTubeチャンネル『Planeta Kiyomi』も運営中。

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