12年ぶりのJ1でなぜ猛威? 京都サンガ“躍進”の「カラクリ」、限られた予算でも新戦力が活きる…低迷脱却への緻密な狙い

38歳という年齢への不安を吹き飛ばしたウタカが躍動

 そんななか、大きなサプライズをもたらしているのがFWピーター・ウタカだ。経験豊富なストライカーの得点力は、過去のJリーグでも実証積みだが、38歳という年齢や近年はJ2でのプレーが続いていたことなどを不安視する声もあった。

 それが9試合ほぼフル出場して7ゴールを挙げ、得点ランキング首位に立っている。ゴール前の冷静さやフィニシュワークの技術は、やはり一級品だ。単純な運動量やスピードは若かりし頃より落ちているが、それを補って余りある経験値や駆け引きの上手さがある。

 とりわけ印象的なのが、第8節のサガン鳥栖戦(3-1)で奪った2ゴールだ。先制点はサイドからの折り返しに対して、マッチアップしたDFの動きを見たポジショニングでフリーの状況を作り、2点目は駆け引きの連続でDFやGKを手玉にとってゴールを決めている。

 さらに、チームとしてもウタカの活かし方が良くなってきたことも後押ししている。京都に加入した2020年はJ2得点王を獲得したものの、ウタカへの依存度が高かった。それが昨年から今年にかけて、エースの優れた能力を活かしつつ、負担を軽減させるサポートも充実してきた。

 攻撃面で「(中盤の選手の)ゴール前への関わり方の質が向上している」(福岡)ことで相手のマークを分散させることや、守備面でウタカが追い切れないところを周囲の選手が広範囲に走ってプレスをかけることなどが、それに当たる。

 また、ウタカが中盤まで下がった時は、ウイングや中盤の選手が最前線へ入ってゴールを決めるなど、多彩な得点パターンの構築にも取り組んできた。

 第9節の柏レイソル戦(2-0)の先制点は、ウタカが低い位置へ下がってポスト役をこなすと、チームメイトが次々にウタカを追い越して最前線へと走り込み、人数をかけてゴールを奪っている。シュートを決めたDF荻原拓也が「京都サンガを象徴するゴールだった」と胸を張ったのもうなずける、会心のゴールだった。

 チーム編成が上手くいき、ピッチ上で繰り広げられるサッカーも迫力充分。長丁場のリーグ戦は始まったばかりだが、12年ぶりの舞台で躍動する京都から目が離せない。

(雨堤俊祐 / Shunsuke Amazutsumi)



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