J1開幕2節でレッドカード9枚を識者はどう見る? 考えられるカード多発の“3つの要因”

浦和MF明元にレッドカードが提示される瞬間【写真:高橋 学】
浦和MF明元にレッドカードが提示される瞬間【写真:高橋 学】

磐田DF山本義道の2枚目の警告は厳しすぎる印象

 逆に、同じ試合での磐田DF山本義道は2枚目の警告で退場となったが、これに関しては厳しすぎるという見解を持っている。うしろからのパスを清水MF滝裕太が捌いた直後の接触だが、チェックに行った山本は間に合わないと判断した段階で足を止めている。しかし、そこに滝が突っ込む形で転倒したからだ。

 そこから一気に清水の攻撃が流れた状況で、主審としても情報量が多い局面だったが、ミスジャッジに相当する判定だったと見ている。ただ、不幸なのは一発退場ではなく2枚目の警告なく、ゴールに直結する場所ではないので、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)からのサジェスチョンができないということ。おまけに退場なのに、その場で試合を止めずに流してしまったので、ルールの適用としても問題があるが、2枚目の警告の扱いは1つ議案になっていくかもしれない。

 その一方でミスジャッジではないが、不幸だったのが横浜F・マリノスの柏レイソル戦でのDF畠中槙之輔の退場だ。前半35分に柏FWドウグラスに対するファウルで2枚目の警告、退場となったが、5分前に同じくドウグラスとの接触で畠中は警告を受けていた。しかも畠中はその後のシーンで右足を痛めており、ドウグラスの突破について行けないなかで、上半身でのチャージが2枚目のイエローになってしまった。

 この試合で2人目の退場となったMF岩田智輝のケースはFW細谷真大に対するファウルで、一度イエローが提示された後、VARチェックで決定機阻止、いわゆるDOGSOと判定された形だが、試合の流れとしては畠中の退場が大きく影響しているのも確かだ。

 繰り返すと、1つ1つの退場をひと括りに結び付けて考えるのはフェアではない。ただし、傾向としてまったくの無関係ではない。ガンバ大阪のFWパトリックの退場に関してはアウト・オブ・プレーの出来事で、筆者の見解ではレッドは厳しい、少なくともオンフィールドレビューで確認するべきだったと考えているが、2枚目の警告を含めて、危険なプレーに関してはシビアに取られるということを各クラブ、選手間でのコンセンサスにして行く必要がある。

 ただ、こうした傾向が続くことで怖いのはディフェンス側にアグレッシブなプレーが減り、結果として試合の強度が下がってしまうことだ。正当なチャージがなくなったらサッカーの醍醐味は半減してしまうし、国際基準でも日本サッカーが強くなってはいけないので、激しくアグレッシブな中に正確性を上げて行く意識が求められる。

 もちろんレフェリーはレフェリーで、試合中のコントロールやVARの関与も含めて、選手はもちろん観る側にストレスのかからないジャッジが増えて行くことが望まれる。2022年シーズンは始まったばかり。ジャッジはもちろん大事な要素だが、願わくばいい意味で熱い勝負や選手のパフォーマンスなど、ジャッジとは別の話題がJリーグの主役になって行くことを期待している。

河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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