旗手怜央、今の森保ジャパンへ抜擢すべきか 4-3-3システムの“推奨ポジション”は?

セルティックDF旗手怜央【写真:Getty Images】
セルティックDF旗手怜央【写真:Getty Images】

【識者コラム】欧州リーグで“生きる”パフォーマンスから日本代表での可能性を考察

 2月3日(現地時間2日)に行われた“オールドファーム”と呼ばれるセルティックとレンジャーズの伝統の一戦で、2得点1アシストの大活躍でセルティックを勝利(3-0)に導いたのは川崎フロンターレから移籍して間もないDF旗手怜央だった。

 CKのセカンドボールを狙い澄ましたシュートでゴールへ叩き込んだ前半5分の先制点も素晴らしかったが、同42分に奪った2点目は旗手の戦術理解力と観察眼、何より高度なセンスを凝縮したようなゴールだった。簡単に解説すると、右サイドで味方が3対4からコンビネーションで崩したのに連動して、左からタイミングよくスペースに入り込んだ。

 キーになったのはレンジャーズの左センターバックであるDFカルバン・バッシーが守備参加したこと。相棒のDFコナー・ゴールドソンがセンターフォワードのFWギオルゴス・ギアクマキスを下がりながらマークした時に、その手前にギャップが生じたわけだが、旗手は少し前のタイミングでスプリントして、中に切り込む味方のFWリエル・アバダからパスを呼んでいた。アンカーのMFグレン・カマラを自らのサイドにストレッチさせてから一気にギアを上げて、カマラを引き離したことが決定的なスペースを生み出す布石になっていた。

 さらに前半44分、旗手は左の大外からのクロスでチームの3点目となるアバダのゴールをアシストしたわけだが、ゴールに絡んだ3シーン以外にも流れの中で生じるバイタルエリアやペナルティーエリア角のスペースにフリーで入り込んでいたシーンは多い。それだけ流れの中でどこにスペースが生じるかは頭に描けているということだ。

 まさしくアンジェ・ポステコグルー監督が横浜F・マリノスの時から選手たちに意識付けしていたことだが、旗手はJリーグ王者の川崎でそうしたビジョンのベースを作ったうえで、スコットランドの環境で、ポステコグルー監督のサッカーにフィットさせていることになる。

 この活躍が続くようであれば、そう遠くない未来にイングランドのプレミアリーグなど、欧州トップリーグ移籍の話題が浮上するかもしれないが、旗手の観察眼とスペース感覚というのは欧州トップトップのレベルでも通用するはずだ。スペースを見つけて走り込める選手、逆にポジショニングや起点のパスでスペースを作れる選手は少なくないが、旗手はその両方をハイレベルにできる。

 あとは、スコットランドよりワンランク上がってくる判断やテンポのスピード、1プレーごとの強度というものに適応していけるかが、活躍できるかどうかの基準になってくる。日本人選手の課題として、接触プレーや重いピッチのプレーが続くなかで怪我をしてしまい、ポジションを失うケースが起きやすい。そこも判断スピードやテンポに慣れるほどリスクは減るので、旗手に関しては怪我のリスクも日本人選手の中では少ないのではないか。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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