旗手怜央、今の森保ジャパンへ抜擢すべきか 4-3-3システムの“推奨ポジション”は?

W杯のメンバーに選ばれるだけならマルチロールでも有効

 もう1つ、日本代表での可能性だが、やはり複数のポジションをこなせることは23人の招集枠に入るうえではアドバンテージになる。ただ、セルティックでしっかりと良いパフォーマンスを維持していけば、マルチロールとしての備えは持ちつつも、やはり特定のポジションで主力を狙えるようにしていきたい。

 “ハリルジャパン”の時にMF遠藤航が、守備的なポジションならGK以外どこでもこなせるマルチロールとして継続的に招集され、しばしば試合でも使われたが、結局のところその立ち位置から序列を上げられず、ハリルを引き継いだ西野朗監督には最終メンバーにこそ選ばれたものの、ワールドカップ(W杯)本大会では使われなかった。これが、遠藤へボランチのスペシャリストとして生きていく決意を強めさせた。旗手もカタールW杯のメンバーに選ばれるだけならマルチロールとしてアピールしていくことも有効だ。

 しかし、例えば左サイドアタッカーとしてMF三笘薫ほどオン・ザ・ボールの突破力は無く、左サイドバックとしてはDF中山雄太ほどの対人守備でスペシャリティーを発揮できるわけではない。今最も輝けるのはセルティックと同じ左のインサイドハーフだろう。幸い森保一監督は4-3-3をメインシステムとしつつあるが、MF田中碧、遠藤、MF守田英正というボランチ本職の3ハーフは、相手のディフェンスを崩し切ることに適した構成とは言い難い。

 もちろん試合を重ねるごとに相手や味方との位置関係に応じた3人の連係、ポジショニングが良くなってきているが、攻撃面では良くも悪くもMF伊東純也の突破力が際立っており、さらに強い相手になったり、研究されたりすると、そこを封じられた時に攻撃力が減退するリスクがある。守備の強度を考えれば、その3人のセットをW杯の本番仕様として捨てる必要はないが、やはり攻撃で違いを生み出せるタレントをインサイドハーフのポジションに確保していきたい。

 旗手は自分でボールを持って仕掛けることもできるが、ボールを持っていない時に相手のディフェンスを引き付けたり、分散させたりしながら、現場レベルではサークルと言われるようなディフェンス間のギャップをいち早く見つけて突く能力は日本代表でもトップレベルだろう。しかも最近の試合で披露しているミドルレンジのシュート力があり、相手のディフェンスは旗手が危険だと分かっていても、的を絞りにくい。

 最終予選の残り2試合を考えるとオーストラリア戦では上記の3人をベースとしたオーガナイズで最低でも勝ち点1を確保し、そこでどういう結果になろうと、攻撃時間が長くなると想定されるホームのベトナム戦(3月29日)で中盤に旗手を加えた布陣を使うことは、結果と今後に向けた収穫の両方を得る意味でも効果的かもしれない。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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