「ファーに残ったら、流れてくるかも」 高川学園の“持っている男”、咄嗟で光った機転を利かせた判断

決勝ゴールを決めた高川学園MF西澤和哉(右)【写真:Getty Images】
決勝ゴールを決めた高川学園MF西澤和哉(右)【写真:Getty Images】

MF西澤和哉が2戦連続決勝ゴール、14年ぶりとなるベスト4進出へ貢献

 仙台育英(仙台)との3回戦で、高川学園は後半アディショナルタイムにMF西澤和哉(3年)が決勝点をマークした。この時に見せたセットプレーは、珍しいものだった。ゴール前で5人の選手が輪になって手をつなぎ、グルグルと回り、それぞれの配置へ散っていく。

 スペイン語で嵐を意味する「トルメンタ」と名付けられた創造性豊かなセットプレーは、世界的にも話題になった。当然、準々決勝で対戦した桐光学園も警戒はしていた。しかし、この試合で唯一のゴールとなったのは、またも高川学園のセットプレーだった。

 試合後、桐光学園FW三原快斗(3年)は「相手の特異なセットプレーで点を取られて、悔しい気持ちが一番強い」と唇をかみ、「映像とは違って迫力があり、相手がどこに来るのかも、まったく分からずに全然対応できなかった。もっと徹底してやれば良かった」と、悔しがった。

 前半、セットプレーの際に3回戦と同じ「トルメンタ」を見せた高川学園だが、決勝点の時は、5人でファーサイドに1つの輪を作るのではなく、3人ずつが2つのグループに分散し、ニアサイド、ファーサイドに固まった。

 ファーサイドの3選手は、手をつなぎ、旋回を始めるかと思われたが、2人がニアサイドに走り、西澤がファーポスト前に残った。

「一言でいうと、持っているヤツ。なぜ、これだけ西澤のところにボールが行くか、ちょっと不思議な思いがする」

 福重良一監督がそう語った西澤によってもたらされた決勝ゴールは、決して運ではなく、冷静な状況判断によって生まれている。

「トリックプレーだったのですが、右と左に3人ずつが立ちました。ニアの3人がファーに回って、ニアのスペースを空けて、そこにファー側にいた全員がニアに飛び込むトリックだったんです。でも、ニアが空いていなかったので、『ファーに残ったら、流れてくるかもしれない』と思っていたら、誰が触ったのか分かりませんが、ファーにボールが来ました。しっかりトラップできたので、押し込むだけでした」

 しっかりとデザインされたトリックプレーをする際、事前の型通りに動きがちだ。だが、西澤はゴールを決めるという目的を見失うことなく、自身の判断を信じて動いた。

 このゴールで、14年ぶりとなるベスト4進出を決めた高川学園。西澤は「ベスト4に進出できて嬉しい気持ちでいっぱいです」と喜びつつも、「ここが目指しているところではない。あと2つ勝って、優勝する」と語る。そして、決勝進出となれば、高川学園にとって初めてのことであることについても触れ、「誰も奪ったことのない得点を、自分が奪えたらいい」と、3試合連続ゴールにも意欲を見せた。

 準決勝の相手は、2大会連続準優勝の青森山田。今大会、大きな話題となっている高川学園のセットプレーは、今季3冠を目指す優勝の筆頭候補にも通用するのだろうか。

(河合 拓 / Taku Kawai)


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