「バカみたいな話ですが…」ロッカー室で涙 日本代表を救ったヒーロー2人の記憶 「キャプテンが抜け…」“最高にして最後の試合”

敵地での躍動に代償、帰国後の検査で左足小指が骨折していることが判明

 しかも、いわゆる”中東の笛”で危険な位置のファウルなど、不利な判定を受けるリスクもあるなかで、この大事な試合で抜擢された川島と今野の存在が日本に落ち着きと勢いの両方をもたらした。試合後、川島は冷静に「自分の持っているものをすべてだそうと思ってピッチに立ちました」と振り返った。

 川島は自身のブログで「バカみたいな話ですが、UAE戦が終わった後は、ロッカールームに戻っても涙が止まりませんでした」と綴り、ロッカールームで涙が止まらなかったことを明かしている。フランスのメスに所属していた川島は所属クラブで出場機会をなかなか得られず、練習試合などで感覚を養うのが精一杯だった。しかし、このチャンスに覚悟を決めて臨み、見事に日本の勝利を支えたことが転機に。クラブでも代表でも状況を変える試合であり、38歳となった現在も心の糧になっているはずだ。

 一方の今野は、”長谷部キャプテンの代役”としても期待されていた部分もあったなかで、「日本の中心でプレーしてきたキャプテンが抜けたことで、チームが崩れてしまったら、日本のW杯が遠のいてしまう」と覚悟を決めた。ハリルホジッチは当時から井手口陽介の才能を気にかけて、ガンバ大阪の試合を足繁く視察していたが、そこで目に留まったのが、しばらく代表を離れていた今野だった。そして当時、G大阪は中盤を逆三角形にしていたこともハリルホジッチの起用法に結び付いたと考えられる。

 ただし、敵地での躍動は代償も伴った。今野は帰国後の検査で左足小指が骨折していることが判明して、ホームのタイ戦を前に離脱することとなった。現在、G大阪から移籍したジュビロ磐田で、度重なる怪我と戦いながらも奮闘する今野だが、”スーパー今ちゃん”を代表の場で披露した最高にして最後の試合となったことは残念だった。

 今回のオマーン戦に向けてはベトナム戦のスタメンがベースになると考えられるが、確かなことは守田英正が累積警告により出場停止になること。柴崎岳やベトナム戦ではベンチメンバーに入れなかった旗手怜央などの起用も想定されるが、チームとしても個人としてもリベンジを期待したいのが原口元気だ。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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