「衝撃すぎた」 闘莉王が五輪で痛感、“世界との差”と教訓「どんな監督でもパニックになる」

東京五輪のU-24日本代表に期待している【写真:荒川祐史】
東京五輪のU-24日本代表に期待している【写真:荒川祐史】

大事なのは“臨機応変な対応力”と力説「どんなに凄い監督でもパニックになるのを見てきた」

 世界と対戦して感じた壁。特にイタリア戦では“スーパーゴール”の連続に衝撃を受けた。

「ここから決められるんだ、この選手のところに良い感じにボールが来たらどうしようもないなと感じた。スーパーゴールばっかりでしたからね。初戦の悪い流れもあっただろうけど、流れが悪いままイタリア戦に入って、普通なら100回打って1回も入らないゴールが、あの試合に限ってバシッと入るんですよ。流れが悪いとスーパーゴールも決められるんだなと実感しましたね。特に、(ダニエレ・デ・)ロッシのオーバーヘッドが衝撃すぎた。マイナス気味に来てあんなの決められたら、ちょっとお手上げですね。気持ちも折れますね」

 ガーナ戦では勝利したものの、すでに2連敗でグループリーグ敗退が決まっていた。最終的にパラグアイは銀メダル、イタリアは銅メダルを獲得した“死の組”。闘莉王氏は3戦で6得点した攻撃力に感謝しつつも、7失点を悔やんだ。

「あれだけ点を取られたら勝ち目ないですよ。戦いとしたらダメなんです。あんなに点の入る五輪、なかなかないくらいだと思いますよ。あれだけ取ってくれたのに『何やってんだ、後ろは』と思いましたよね。完全に後ろの責任。僕も含めてね。後ろが安定しない試合は成り立たない。日本の勝ち方は後ろが安定しないと勝率はぐっと下がる。W杯を見ていても五輪を見ていても、1-0とか堅い試合に持ち込まないと。4点とか取られていると勝負にならないですね」

 東京五輪ではオーバーエイジ枠にA代表主将のDF吉田麻也に加え、DF酒井宏樹、MF遠藤航と守備力を強化する顔ぶれとなった。メダル獲得には絶対に守備を崩壊させてはならない。そのうえで大事なのは、“臨機応変な対応力”だと闘莉王氏は語る。

「僕はまだアテネだったけど、今度は開催国でプレッシャーがもっとあるわけですから。『予想外のことが起きる』という心構えでいけるか。そういうことを考えられるか。なんか上手くいく時、大胆にいくことも大事だけど、大胆にいき過ぎるのも裏に何かあるっていうこと。そのプレッシャーがいろんな予想外のことを起こす。それをどれだけ自分たちで解決できるか。これは監督も含めてですけどね。予想外のことが起こると、監督が一番先にパニックになるんです。今までの経験上、どんなに凄い監督でもパニックになるのを見てきた。予想外のことが起こると必ずパニックになるのが監督。選手たちがどれだけカバーするかが大事です」

 五輪で活躍すればA代表への道も拓ける。来年のカタールW杯へも大きな近道となる。若い選手たちにとって、大きなアピールの場。この大会で東京五輪代表は栄光を掴むことができるのか。サッカー人生を懸けた大舞台での飛躍に注目だ。

[プロフィール]
田中マルクス闘莉王/1981年4月24日、ブラジル出身。渋谷幕張高を卒業後、2001年に広島でJリーグデビュー。03年に日本国籍を取得し、04年アテネ五輪に出場した。その後は浦和でJ1とACL初制覇、名古屋でもJ1初優勝に貢献。06年にはJリーグMVPを受賞した。日本代表としても43試合8得点の成績を残し、10年南アフリカW杯ベスト16進出の立役者に。19年限りで現役引退。Jリーグ通算529試合104得点で、DF登録選手の100得点はリーグ史上初。現在は公式YouTubeチャンネル「闘莉王TV」でも活動中。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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