大迫を苦境に陥れる「あくびが出るサッカー」 ブレーメン監督の信念と加速する世代交代

現状の戦い方では、大迫は交代選手の選択肢にもなかなか入らない

 試合後の記者会見でコーフェルト監督は、「ニックはトレーニングで素晴らしかったんだ。それも先週だけ良かったわけではない。この2カ月、ずっといいトレーニングをしていた。攻守の切り替え、守備でのポジショニングで問題があったので前半での交代となったが、非常にいい選手だよ。まだU-19の選手だということを忘れてはいけない。今後も信頼して出場機会を与えるつもりだ」と、その理由を明らかにしていた。

 その他にも左センターバックを務める22歳DFマルコ・フリードル、サイドバックでプレーする20歳MFジャン=マヌエル・ムボム、前線では20歳のFWジョシュ・サージェントがレギュラーとして起用され、バイエルン戦では21歳DFフェリックス・アグがプロデビューを飾っている。若手の出場機会を増やしながら、順位的にも悪くはない。

 一方でベテラン勢は出場機会が激減している。キャプテンのDFニクラス・モイサンデルはポジションを失い、MFフィリップ・バルクフレーデはセカンドチームでプレーすることに。そして大迫も苦戦している。

 開幕のヘルタ・ベルリン戦(1-4)こそスタメンで起用されたものの、その後は一度も監督のファーストチョイスに入っていない。ここまでの公式戦の通算出場時間は186分で0得点0アシスト。オフェンス陣はサージェント、MFミロト・ラシツァ、MFレオナルド・ビッテンコートがポジション争いでリードし、負傷離脱中のFWニクラス・フュルクルクが復帰したら状況はさらに苦しくなると予想されている。

 チームの戦い方が秩序だった守備で相手の攻撃をコントロールし、ボール奪取後は可及的速やかにカウンターへ移行してゴールを狙うという戦い方をベースにしているため、大迫は交代選手の選択肢にも現時点ではなかなか入ってこない。スピードがあり、スペースへの飛び出しが巧みな選手の名前が先に呼ばれていく。

 このまま出場時間がないままだと、冬の移籍市場での放出もテーマに上がってくるのではないかと推測する声もあるが、現時点でブレーメンのチームマネージャーを務めるフランク・バウマン氏は、「冬の移籍はない。後半戦にユウヤのことが必要になることを確信しているからだ。だから我々のほうから、そうした方向への話はない」とコメントしている。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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