五輪延期、日本代表は森保監督交代の転機 さらに増した“兼任”のデメリットとリスク

日本代表とU-23代表を兼任する森保監督【写真:Getty Images】
日本代表とU-23代表を兼任する森保監督【写真:Getty Images】

五輪延期で様々な余波、A代表と五輪代表を兼任する森保監督に多くの難題

 東京五輪の延期が基本合意にいたったとIOC(国際オリンピック委員会)が発表した。A代表とサッカー男子五輪代表を兼任する森保一監督は公式コメントで「各活動を充実させて、東京オリンピック開催時によりパワーを持って臨めるよう、これまで積み重ねたものをさらに積み上げていきます」と語ったが、多くの難題が待ち受けそうだ。

 大きなネックは現時点で”おおむね1年程度”という見通しの日程がいつ、どこの日程に組み込まれるかということ。サッカーは五輪でも興行面で大きなコンテンツの一つだが、サッカー界全体からすれば特に優先される大会ではない。資格がU-23の選手と3人のオーバーエイジに限定され、しかもFIFA(国際サッカー連盟)から代表チームの拘束権を与えられていないことが何よりの証拠だ。

 それでも通常は夏開催であるため、秋春開催が中心の欧州リーグからもクラブの合意次第で参加できるケースは多かった。しかし、今回はサッカーだけでなく、様々な事情を考慮して春開催や欧州リーグなどがシーズン終了していない時期の開催もあり得る。開催が来年になれば出場資格がU-23のままだと、もともと出場資格のあった97年生まれの選手が参加できないのではないかという声もあるが、それ自体はFIFAがU-24に変更する例外措置をIOCに提案して、合意すればいい話なので、そこまで大きな障害ではない。

 大きな影響を受けそうなのが開催時期だ。”おおむね1年程度”の候補は8月とは限らない。コロナが収束する前提で予選との兼ね合い、アスリートの準備や環境などを考えれば春先の開催は十分にあり得る。ただ、そうなるとサッカーの場合は欧州リーグなどのレギュラーシーズンに日程が被ってしまい、クラブからの選手の供出が難しくなる。特に主力として活躍している選手ほど参加の見通しは難しくなるだろう。

 6月から7月頃に開催される場合は開催が1年延期されたEUROやコパ・アメリカと日程が重なり、オーバーエイジも含め、各国のA代表クラスが参加することは難しくなる。もちろん日本の場合はその支障はない。もともと欧州のシーズンが終わってから準備をして本番に臨む時間がタイトになるが、カレンダーが決まれば本番から逆算して強化プランを立てて行くことは可能だ。ただ、W杯(ワールドカップ)のアジア最終予選と東京五輪の日程が被るような場合は前者を優先するべきだろう。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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