複数のJクラブ注目の京都橘FW岩崎が高校サッカーを選んだ理由 “探し求めた居場所”

決定的な出会い

 中3になると、当然のように彼の元には、たくさんの誘いが届いた。「jユースからは、ヴィッセル神戸、京都、アルビレックス新潟。高体連は京都橘からお話を頂いて、4つの選択肢があった」。気持ちは京都橘に傾いていたが、正直迷った。
 Jユースには群を抜く環境が整っていた。一方で、今や強豪校の京都橘だが、練習環境は恵まれているとはいえなかった。学校のグラウンドは土で、フルコートを取ることができないほど狭い。間借りをしている桃山城グラウンドは広いが土のグラウンドで着替えも屋外だ。両方とも雨が降れば、たちまちぐちゃぐちゃになってしまう。しかし、それは彼にとって大きな問題ではなかった。
「グラウンドが土でも全く気になりませんでした。どの環境でもボールは変わらない。丸いし、ピッチは長方形だし。バウンドが変わるだけなんで、真剣に楽しくできれば全く気にならない」
 環境ではなく、いかに自分らしくサッカーができて、人間としても成長できるか。彼の尺度はそこにあった。当時読んだ、日本代表DF長友佑都(インテル)の自著の中で『一流の人間でなければ、一流のサッカー選手にはなれない』という言葉が印象に残ったという。「人間的にも成長をしないといけないと思うきっかけになった」。その考えが進路の決め手の一つとなった。
「最終的には神戸と、京都橘で迷いました。神戸の練習に参加した時、ボールもすごく回るし、レベルも高くて楽しかった」
 気持ちが揺れ動く中で、決定的な出会いに突き動かされた。国体の滋賀県選抜に入っていた岩崎は、隣の京都府選抜とたびたび試合をしたという。その選抜チームを率いていたのが、京都橘の米澤一成監督だった。試合で対戦する度に、「最近どうや?」とサッカーのことはもちろん、いろいろなことを気に掛けてくれた。いつしか「この人の下でなら人間的にも成長できる」と思うようになった。
 この交流によって、初めて京都橘をテレビで見た時に受けた衝撃の在りかを知った気がした。選手の人間力が高いからこそ、あの戦いぶりとなり、その表情が画面を通して伝わってきたのだろうと。自分もあの一員になりたい。その思いが、彼を京都橘へと導いた。
 そして今、その決断が間違っていなかったことを実感している。1年生からレギュラーをつかむと、昨季の選手権ではベスト8進出に貢献。その圧倒的な突破力と打開力は、Jクラブのスカウトからも注目を浴びるようになった。2年生になった今年、すでにFC東京と鹿島アントラーズが獲得に興味を持つなど、争奪戦はヒートアップしている。
「選手権に出て人生が変わった。代表にも選ばれ、海外遠征も経験して、あらためて自分を見つめ直すことができた。選手権に向かってチームが一体となっていく。この過程に自分がいられることはすごく大きいし、成長にもつながっていると思う」

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