坪井慶介が愛され、慕われた理由 J2山口での“最後の2年”に同僚感謝「幸せな時間だった」

レノファ山口の坪井慶介 2019年3月24日の栃木戦、試合写真(みらスタ)【写真:上田真之介】
レノファ山口の坪井慶介 2019年3月24日の栃木戦、試合写真(みらスタ)【写真:上田真之介】

40歳の元日本代表DF、今季限りでスパイクを脱ぐことを決断

 元日本代表で、浦和レッズや湘南ベルマーレでプレーしてきた坪井慶介が現役引退を決めた。

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 大舞台での活躍や、浦和、湘南でのプレーは今さら語る必要もないほど、彼は大きな足跡を残してきた。輝かしい経験を持つ坪井が、プロサッカー選手の最後に選んだクラブが、J2レノファ山口FCだった。Jリーグを歩き始めたばかりのチームだ。2018年1月、彼は会見の席で「成長に年齢は関係ありません。それを証明したい」と意気込むと同時に、「これから何をするかが大事だと思います。前を向いて進んでいく」と誓った。

 彼が山口で示したのは、人格者のプロフェッショナリズムだった。坪井の加入年からキャプテンを務める三幸秀稔は、ひたむきで、それでいて竹を割ったような表裏のない坪井の人間性に惹かれ、この2年間、背中を追い続けた。

「ツボさんはいつも一番最初にロッカールームに来て、毎日同じことを続けられる。ただ、その毎日続けることが一番難しい。僕たちよりも体脂肪が低いまま維持しているし、試合のメンバーに選ばれなくても、練習試合で11キロ近く走る。常にコンディションを維持して、メンバーに入るための準備をする。ツボさんだからできることだった」

 三幸自身もJFAアカデミー福島時代に東日本大震災に遭ったり、所属チームがない時期があったりと、階段を順調に上がってきたような半生ではない。サッカーができる幸せを誰よりも感じている三幸が大きなインパクトを受け、今なお憧憬の的となっているのが、飾らない坪井慶介の姿だ。

「常に自分に正直な人。休む時は思い切って休むし、はっちゃける時ははっちゃける。でもピッチに何も言い訳を持ってこない。週明けにはいつものツボさんが、ちゃんとグラウンドにいる。『あれだけふざけていたツボさんはどこに行っちゃったの?』と思うくらい、サッカーに対して真剣だった」

 今年、坪井の出場機会は大幅に減った。坪井は「スピードやキレが自分の許容範囲を超えた」と語ったが、それは働き続けた40歳の体の正直な反応だろう。それでも練習場にはいつもと変わらない坪井の姿があった。ベンチ外になることに対して不満をこぼすこともなく、練習では高さやスピードを生かして競り合い、一回りも下の選手たちの話にも耳を傾けた。

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