「ジャパンウェイ」の追求とW杯の奇跡 歴史的勝利の裏にあった“監督を越えた瞬間”

元日本代表監督のイビチャ・オシム氏【写真:Getty Images】
元日本代表監督のイビチャ・オシム氏【写真:Getty Images】

オシム氏が掲げた「日本サッカーの日本化」に近い概念

[3]「ジャパンウェイ」の具体性

 エディー氏もラグビー日本代表監督の就任にあたって、日本サッカーと同じ「ジャパンウェイ」というキャッチコピーを掲げている。

「ジャパンウェイというのは日本人らしい、日本にしかない独特のラグビーということ。要はそれまで日本のラグビーというのは、体が小さいと言われても、体の大きなヨーロッパやオーストラリア、ニュージランドなどのラグビーを模倣しようとしていたんです。そうじゃなくて、日本人にしかできない、日本人らしいラグビーをやらせる。それがジャパンウェイだ、と」

 元日本代表監督のイビチャ・オシム氏が、「日本サッカーの日本化」という言葉で語ったことに、イメージは近いものを感じる。

 エディー氏は日本代表監督の在任中、ジョゼップ・グアルディオラ監督(現マンチェスター・シティ監督)を当時率いていたバイエルン・ミュンヘンまで訪ね、彼のサッカーのコンセプト、それを実践できるためのトレーニングの工夫などの話を聞きに行っている。グアルディオラのサッカーのどのあたりが、「日本ラグビーの日本化」に役立ったのか興味深いところだ。

 彼が持っている日本ラグビーのビジョンを実現するためには、フィジカルに劣る日本人が、逆説的だが「その特長を生かすためのフィジカル」を徹底的に鍛える必要があった。

 稲垣氏は次のように証言する。

「相撲を見てみなさい、小さな力士が大きな力士に勝っているじゃないか、と。例えばエディーは、千代の富士なんかを例にしていました。それがラグビーでもできるはずだと。日本人の素早さを生かした、速いラグビーをやろうということですよね。そのためには強靭な体が必要になってくるということで、そのための厳しい練習をして、ファンダメンタルなスキルに対するこだわりもありましたね。スクラム、ラインアウトというラグビーの大事なファクターでは、体の小さな日本人は不利だと言われますが、そこも世界で伍するようにならなくちゃいけないと。求めていたのはスクラム、ラインアウトの強化と、ジャパンウェイを実現するためのスピード、低く鋭い相手の足もとを狙うタックル。それを実現するために世界一のフィットネスを身につけようとすると、当然練習はきつくなるわけです。そのきつい練習をしなかったら世界では勝てないし、そこでめげていたら当然勝てない。でもそれをやったら、強くなるんだということを盛んに言っていた。それがエディーの信念。4年間、それは変わらなかったですね」

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