J2徳島の井筒陸也、24歳でプロサッカー選手を引退 「人生を懸けた勝負」で志すもの

「勝利」に対する視野を広げる

――「勝利についてもっと違う角度から見てみたい」というお話がありました。この部分について具体的に教えてください。

「僕はこれまでも、勝利を追求するだけではない“スポーツの価値”を意識してきました。大切なのは勝利か、理念かという議論でいえば、僕は理念を第一に考えます。先日、成山一郎監督(関西学院大学サッカー部で井筒も在籍した2010年から16年に監督、17年愛媛FCトップチームコーチ、18年〜Criacao Shinjuku監督)にお会いしたんですが、その時に『勝利を追求することは、練習をひたすら頑張るという一点集中の職人的なことではなく、視野を広げていくことだ』とおっしゃっていたんです。

 本当に勝利を追求しようとしている人は当然、練習も頑張るし、コンディション調整にも気を遣う。人間関係も、組織論も、ビジネス的なアイデアも、哲学的なアイデアも、すべてを取りにいっている、と。そういう意味では、僕も視野を広げることが一番大切だと思うんです。それはつまり、勝利に対する見方を広げていくと、そこにまつわるいろいろなファクターが出てくるということ。そのいくつものファクターの中から何を選ぶのか、その幅はそれぞれが自由に持てればいいなと思います」

――目の前の試合に勝利するためには練習に打ち込むべきという考え方がこれまでは多かったけど、そんなに短絡的なものではないということですね。練習して技術を磨くことももちろんですが、たとえば、普段の生活を見直して選手が人間的に成長することも、フロントが選手を新しく獲得することも、すべてが等しくチームの「勝利」につながっている、と。

「成山監督は以前から『まずは勝利を目指せ』と言う人だったので、もしかしたら僕とは考えが相容れない部分があるのかなと思っていたんです。でも、全くそんなことはなかった。スポーツである以上は、まず勝利が先にあるのは当たり前です。でも、勝利を追求していくなかで、人間的な成長やビジネス面のアイデアなどのピッチから離れた部分のことも必然的に関わってくるんです。

 僕が考えているアプローチもまさにそういうものです。スポーツの特性として、勝利というものは明確な概念なので、言い訳することなくそこの追求に集中できると思っています。だからこそ、まだまだサッカーについて考えられることがたくさんあるし、突き詰めていけば勝利がより理解できるはずなんです。でも、今のスポーツ界で問題なのは、一つの価値観の中にいて、選択や意思決定が行われていない環境が多いことだと感じています」

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