もしも高校サッカーがなくなったら? 世界的に珍しいハイレベルな“非エリート”の行き先

日本は世界で珍しく「エリート」と「エンジョイ」の中間層が充実

 競技力と普及の両面での役割を終えた高校選手権が仮になくなるとしたら、日本のサッカー界はどう変化するのか。

 高校年代の実力ナンバーワンを決める大会としては高円宮杯がある。そう考えると、高校選手権はなくても困らないかもしれない。だが、選手権はなくても高校サッカーがなくなると困る、あるいは大きく変わることがある。

 高校サッカーと、その象徴である選手権がなくなると、おそらく高校年代のサッカーはプロを目指す「エリート」と「エンジョイ」層に二分されるだろう。現在、プレーしたい高校生は部活動に参加すればサッカーができる。当たり前のようだが、例えばヨーロッパではそういう環境にない国のほうが多い。そのかわりにクラブチームがあるわけだが、日本にはユース年代のクラブチームは少なく、グラウンドやクラブハウスまで完備しているところなどほとんどない。インフラ面で、高校サッカーは大きな役割を担っている。

 日本は世界的に珍しいぐらい、「エリート」と「エンジョイ」の間の層が厚い。高校選手権を目指してエリート並の練習に明け暮れている選手の数が多く、プロではないが草サッカーレベルでもないというプレーヤーを大量に輩出し続けているわけだ。その点では堂々たるサッカー大国なのかもしれない。

 ところが、その中間層は高校3年間で燃え尽きてしまって、「もうサッカーはいいや」ということでJリーグのサポーターにならないことが多い。無理にエリート扱いしたことで、Jリーグは潜在的に最も強力なファンを取り逃がしている。もしかすると高校年代が「エリート」と「エンジョイ」に二分されていたほうが、Jリーグのファンはもっと増えるかもしれない。

 もちろん、高校のサッカー部自体がなくなれば、サッカー人口は激減する。現状でプレーする「場」がないからだ。現在でも中学年代から高校年代で半減しているが、その比ではなくなる。「選手権と全少(全国少年サッカー大会)がなくなれば、日本サッカーは飛躍的に強くなる」という意見も聞くが、何もかもいっぺんにはできないし、一気に解決できないほど利害関係が複雑に絡み合っている。何か良い解決方法はないものかと、この時期になるといつも思うのだ。

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(西部謙司 / Kenji Nishibe)

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西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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