長谷部に漲る“情熱”と久保が吐露した“悔恨” 思慮深きニュルンベルクで見た「日本人対決」

長谷部に漲る闘志「最近のプレーのフィーリングは良い」

 最近の長谷部は気力が漲(みなぎ)っている。右にダビド・アブラハム、左にエバン・ヌディカを従えてピッチ中央に陣取った彼は、達観したかのような仕草でビルドアップの起点役を貫いていた。そして彼は、他の味方選手がセーフティなパスワークに終始するなかで、時折敵陣中央へ鋭い縦パスを突き刺して戦況を変化させようと腐心していた。

「最近のプレーのフィーリングは良いと思っています。少し劣勢な状況でもあったので、なんとか状況を改善したいと思ってプレーしていましたね」

 味方選手が不当なファウルを受けたと感じたら、真っ先に主審の元へ走り寄って抗議の意を示す。フランクフルトの現キャプテンはアブラハムだが、チーム最年長でもある長谷部は精神的な支柱としても尽力し、その努力を惜しまない。苦しい状況に置かれた時、いかに処するか。すべてを認識する彼は、苦境のなかでも虎視眈々と反撃の時を狙っていたのかもしれない。

 かたやニュルンベルクの久保は、普段は朴訥とした所作で大人しい人物であることを露見させるが、いざピッチに立つとその表情が一変する。頻繁に両手を広げて味方選手へパスを要求し、ボールを受ければ一心不乱に相手ゴールへ突進していく。相手の激しいチャージに倒されても、その都度立ち上がって何事もなかったかのようにプレーを再開する。久保はドイツ語圏のスイスで約3年間プレーした経験があるため、ドイツ語を流暢に操り、チームメイトとの意思疎通もスムーズで、味方も躊躇なく彼へボールを預けていく。

 後半32分、攻勢を強めたニュルンベルクは敵陣ゴール前で相手クリアを受けた久保が慎重にインサイドで右足を振り抜いてシュートを放つ。しかし、その軌道を読んだGKケビン・トラップにセーブされて好機を逸すると。彼は頭を抱えて悔しさを露わにした。しかし、その流れで得たCKから、久保は起点役となってフィルジル・ミシジャンの先制点をお膳立てし、まずは仕事を果たした。

 ビハインドを負ったフランクフルトは当然反撃へ転じる。ターンオーバー的にベンチに待機していたFWセバスティアン・ハラーが途中出場でピッチへ立つと、その勢いが加速する。ただ、この時点で攻撃の全権を担うアンテ・レビッチやミヤト・ガチノビッチは連戦の疲労を考慮されたのか、途中交代を強いられている。

島崎英純

1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。

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