コロンビアの“要注意人物”ハメスの凄さとは? ドイツ在住日本人コーチがプレーを分析

“間”の使い分けが適切で鋭い

 さらに相手の動きの逆を取って、鋭いターンや細かいステップで体を入れ替えて抜け出すプレーも得意だ。小刻みな間とゆったりとした間――その使い分けが適切で鋭い。

 相手との間合いをコントロールしながら、同じ体勢から様々な種類のパスやトラップ、シュートを正確に繰り出せるので、常に相手のタイミングをずらしてパスを送ることが可能だ。

 例えば、インサイドでサイドへパスを出すと見せかけておいて、相手がそれに食いついたらそのまま少しボールを流し、体を倒しながら裏のスペースへスルーパスを送る。あるいは、浮き球をコントロールする素振りをしていたのに、最後の瞬間に足首だけの動きでスペースにボールを運び、相手のマークを一気に引きはがしてみせる。ワンステップで多角的にパスを供給できるので、ギリギリまで相手を引きつけることができるのも魅力だ。

 間合いの取り方が上手いことは、守備でも生かされている。相手への距離の詰め方が上手く、またスライディングタックルを仕掛ける時でも、タイミングと位置取りとスピード感覚が適切なので、ただブロックするだけではなく、しっかりと奪い返すことができる。バイエルンの試合では何度もハメスが中盤でボールを奪取し、そこからカウンターを仕掛けるという場面が見受けられるのだ。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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