天才バッジョを次々と襲った悪夢と逆風 失意を希望に変え続けたファンタジスタの輝き

 

バッジョが悔やむフランス戦のワンシーン

 初戦のチリ戦は、デル・ピエロの状態を加味してバッジョがスタメンになった。灼熱のアメリカでトレードマークだったポニーテールは切り落とされ、短髪になったバッジョはFWクリスティアン・ヴィエリに絶妙なラストパスを通してゴールを導く。そして、1-2のリードを許した残り5分、右サイドでボールを持ったバッジョはチリDFのすぐ脇を通すようなパスを選択。これがハンドを誘い、PKを得て自ら決めて引き分けに持ち込んだ。「バッジョはわざと相手の手に当てたのではないか」と、まことしやかに語り継がれた。

 続くカメルーン戦もバッジョがスタメン出場し、デル・ピエロが途中交代で出場。第3戦オーストリア戦は、デル・ピエロがスタメン出場してバッジョが途中出場となった。16強のノルウェー戦は、デル・ピエロが先発してバッジョには出番なし。デル・ピエロが動きに重さを見せてノーゴールと本来のパフォーマンスを見せられないなかで、バッジョは軽快な動きでオーストリア戦でもゴールを決めていた。

 大会が進むにつれてデル・ピエロを優先しようという意図が見える指揮官の起用法に対し、結果を残すのはバッジョ。準々決勝で地元フランスと戦う前に、論争はさらに激しさを増し、バッジョのエース起用が待望されるようになっていた。

 それでもフランス戦で先発起用されたのはデル・ピエロ。両チームにゴールなく進んだ後半の半ば、タッチライン際に背番号18が立つと、交代ボードに示された番号は「10」だった。イタリアの期待を背負ってピッチに入ったバッジョが悔やんだのは、延長戦に訪れたビッグチャンスだった。

 

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