短所を補う戦略は「ノイズでしかない」 ジャパンズ・ウェイの弊害…世界一へ必要な“強化の王道”

ジャパンズ・ウェイ戦略に隠れた弊害【写真:徳原隆元】
ジャパンズ・ウェイ戦略に隠れた弊害【写真:徳原隆元】

「日本化」というノイズ

 日本サッカー協会(JFA)が「ジャパンズ・ウェイ」と言い始めたのは2006年頃だっただろうか。日本の特徴を活かしたフットボールを作るという意気込みだと思うが、日本式とも和式とも言わず英語にした時点ですでに怪しさが漂っている気がしたものだ。

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 日本の長所を活かすプレースタイルということに異論はない。

 ただ、その日本の特徴、長所短所を現時点の資源で考えるのは意味がないと当時から思っていたし、現在もそれは変わらない。

 例えば、当時は長身のCBやGKが少なかった。空中戦やフィジカルコンタクトで不利になるので単純に考えれば短所である。しかし、その短所を露呈せずに俊敏性や技術の高さを活かせばいい。そういうのがジャパンズ・ウェイだと誤解されている節があった。

 あれから20年ばかり過ぎた今となってみれば、何でそんなことを考えていたのかと思ってしまう。日本代表のGK、CBは体格面で欧州、南米などに比べても遜色ないほど大型化したからだ。

 さらにもっと以前は技術も足りず、体格も劣り、個人戦術でも強豪国に太刀打ちできないなかで、それでも勝てる上手い方法はないかと知恵を絞っていたのだ。辛うじて武器になりそうな日本人の勤勉性あたりを活かした独自の戦い方を模索していた。何もかも足りないのに、それで勝とうというのはあまりに虫のいい話だが、足りないからこそ何かで補おうとしていたのだと思う。

 本気で世界一を目指すなら、すべての面で優勝して当然というくらいのものを揃えるのが先決で、ないものを何かで誤魔化そうとするのは根本的に間違っている。技術、体力、精神力、戦術、選手層、バックアップ体制、国民的熱意など、全部揃えてようやく勝負の入口に立てるのではないだろうか。

 もちろんそれは理想論である。何かが足りなくても4年経てばワールドカップは来るわけで、その時の最善をぶつけるしかない。ただ、20年先を見据えた強化において、現在の資源で「ない」を前提として考えるのではなく、常に「ある」を前提にしていくのが王道だと思う。

 その点で、日本式とか日本独自という考え方はノイズでしかない。仮にワールドスタンダードになっているスペインのプレースタイルでやるとなった時、「6番」がいないという現実につきあたる。そこで6番がいないなら8番を並べた2ボランチの編成にする。来年がW杯ならそれが最善かもしれない。しかし、20年先を考えるなら「ない」を前提にするのは自ら可能性を狭めているだけだ。まず「ない」を「ある」にするという考え方で取り組むこと。大型のCBが「ない」なかでどうすべきかを考えていたのが今にして振り返ればナンセンスだったように、4-3-3システムの重要なパーツである6番なしで何とかしようというのも虫のいい話なのだ。

 日本の特徴を保持することは重要だ。スペイン化してみたら、いつのまにか元来の強みを失ってしまったドイツ、イタリアの轍を踏んではならない。ただ、ジャパンズ・ウェイを「ない」を誤魔化すための隠れ蓑にしてはならず、むしろ現状の日本を凌駕し塗り替えていくのだから、日本化はほとんど考える必要のないノイズでしかない。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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