SNSで大バズりの“オフサイド判定ゲーム” 体感して分かる現実…審判への誹謗中傷は「許されてはいけない」

オフサイドを判定するゲームがSNSで大反響(写真はイメージ)【写真:徳原隆元】
オフサイドを判定するゲームがSNSで大反響(写真はイメージ)【写真:徳原隆元】

オフサイド判定ゲームが「めっちゃ面白い」とSNSで大反響

 サッカーの副審になってオフサイドを判定する――。シンプルなゲームがX(旧ツイッター)上で大きな話題になっている。公開から1週間ほどでインプレッション(表示回数)は50万を超えたほか、リプライ欄には国内外から「めっちゃ面白い」「本当に素晴らしいゲーム」など反響の声が。しかし制作者に話を聞くと、そこには娯楽だけにとどまらない、サッカーを取り巻く言論空間に一石を投じたい思いがあった。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・山内亮治)

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「おもしろかったので、サッカーの副審になって、オフサイドを判定するゲームをつくってみました」

 こんな一言とともに自身のXアカウント上で10月20日、ゲームを公開したのは「とて」さん。普段は教育やITの分野でフリーランサーとして働く傍ら、イングランド2部で戦うシェフィールド・ユナイテッドをこよなく愛し、イングランドサッカー協会(FA)のコーチングライセンスを取得した経験もあるなど、英国サッカー事情に造詣が深い人物だ。

 そんなとてさんがこのほどゲームを制作したきっかけは、野球のストライク・ボール判定ゲームをある投稿で目にしたことから。触発されると同時にオフサイド判定を巡って誤審かどうか物議を醸していた事象が脳裏をよぎり、「実際に判定するゲーム作ってみたら面白そうだ」と考え、3日で完成させた。

 ゲームのスタート画面に表示される遊び方の説明は次の通りだ(以下※部分は編注)。

1.(※←→のボタンを押しながら)走って、最終DF(GKを除く)と横に並ぶ
2.パスが出るとボールが光り、3秒のバーが(※画面上方に)出る
3.オフサイドだと思ったら「旗を上げる」。押さなければオンサイドのコール
4.誤審3回で終了。正解が増えるほど人数が増え、駆け引きが入る

 ゲームはプレーヤーと同じ目線に立つことで没入感に浸ることができる。また、とてさん曰く、制作にあたっては「簡単さと難しさの共存を念頭に置きつつ、旗を上げた時に出る音など現場感の再現にも心を砕いた」とのこと。

 筆者も取材にあたって実際にプレーしてみたが、ややポリゴンな見た目とは裏腹にスピード感は確かにリアルだ。最初は簡単だと思っていても、駆け引きが入ってくると難易度がぐっと上がったように感じる。10回ほどプレーして何とか2600点台(国内リーグの審判レベル)を獲得。オフサイドだけでなく、オンサイドも正確に見極めなければいけないことも難しさを増幅させる。それでも、ゲームに搭載された通算ランキングを見ると9050点を獲得した“手練れ”もいるから驚きだ。

 そのほかに工夫した点で言えば、判定に対するフィードバック画面。判定の正解・不正解に加え、「受け手は最終DFより〇〇㎝前」とオフサイドの状況が詳しく表示される。とてさんによると、「こんなの分からない」といったツッコミの声も寄せられるそうだが、そこもある意味でゲームの狙いだ。

「『でも、これって副審がいつも直面している現実なのか』と想像が膨らむ楽しさもあるのではないかと思います」

ゲーム制作の根底にあった問題意識

 副審の現実を追体験して楽しむことだけが、このゲームに込めた思いではない。制作の根底にあったのは、とてさんが普段からサポーター・ファンに対して感じていた問題意識だ。

「シェフィールド・ユナイテッドを応援している関係で、普段からイングランド2部クラブを応援するニッチではあるものの凄く熱量のある方々と仲良くさせてもらっています。そうした人たちは当然、サポーターとして勝ち負けに一喜一憂しますが、それ以上にお互いに対するリスペクトがあり、罵り合うことがあったとしてもそれを守ったうえで行っているんです。フットボールをよく理解し、マナーを遵守している人がたくさんいるというのが率直な印象です。

 半面、現在のSNSにおける言論空間には、個人の一視点に限定された意見が多いのではないかという疑問や問題意識があります。フットボールを取り巻く世界がもう少し寛容であれば理想だと考えていて、今回のゲームはそのための一助になってほしいという思いがあります」

 オフサイド判定を追体験することで、副審が日頃直面している現実に想像を働かせる。確かに、少しでも当事者の視点に立つことができれば行き過ぎた発言を思い止まることはできるかもしれない。それこそ今回のゲームが作られた意義であり、サッカーに限らずどんな世界でもそうである。

 制作者のとてさん自身も、副審の大変さについて身をもって感じだ1人だという。ただ、「1人のサッカーファンとして今後も不可解な判定があれば文句は言うと思います」とのこと。発言の真意はこうだ。

「不満を口にするのもサッカーの楽しみ方の1つ、いわばカルチャーの一部だと考えています。僕が普段観ているイングランド2部リーグはVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が採用されていない事情もあり、時には何か言いたくなります。

 それでも、越えてはいけない一線は間違いなくある。海外で見られるような審判への脅迫や極端な誹謗中傷は明らかな誤りで、許されてはいけません。サッカーを理解し関係する当事者へのリスペクトを持っての不平不満か否か。それを心得て発言するのと心得ず発言するのには大きな違いがあります。今回制作したゲームをプレーすることで、そこへの理解につなげるきっかけになってくれればと願っています」

 オフサイド判定ゲームは、公開から1週間足らずで14万回プレーされたそうだ。とてさんがこめた願いは、きっと多くの人たちに届いていることだろう。ちなみに、今後はハンドやDOGSO(Denying an Obvious Goal-Scoring Opportunity=決定的な得点機会の阻止)でも同様のゲームを制作する構想があるという。

 サッカーにテクノロジーが導入され正確な判定と誤審の減少につながったとはいえ、それでもファン・サポーターによる誹謗中傷などが完全に無くなったわけではない。その一因として他者に対する想像力の欠如も考えられる。ゲームを1つのきっかけとして悪しき風習や傾向に歯止めがかかり、安心・安全なサッカー環境が整うことを願いたい。それが日本サッカー界の発展につながるかもしれないのだから。

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