絶対王者がデビュー戦も「逆に良かった」 ブンデス移籍→苦境の2か月も…示した資質「違いを生み出せる」

フライブルクの山本理仁【写真:picture alliance/アフロ】
フライブルクの山本理仁【写真:picture alliance/アフロ】

山本理仁が第7節バイエルン戦ブンデスデビュー

 ようやく巡ってきた出番は、バイエルン・ミュンヘンとの一戦だった。

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 今夏、ベルギー1部シント=トロイデンからフライブルクへ移籍したMF山本理仁は、10月25日に行われたブンデスリーガ第7節バイエルン戦で58分から途中出場。ついに新天地での公式戦デビューを果たした。

 0-2で迎えた終盤には、ゴール前へ飛び込んで相手のオウンゴールを誘発し、一時1点差に迫る得点に関与した。試合は1-3で敗れたものの、出場機会を待ち続けてきた山本にとっては、ようやく踏み出した貴重な第一歩となったことだろう。

「やっとデビューできたなという気持ちと、でもまだまだなところもよく見えたので、ここからだと思います」

 試合後のミックスゾーンでは、久しぶりとなった試合の感触についてそう語っていた。そして、加入後すぐに新しいチームの力になりたいと思っていたが、自身のコンディションを上げられず、ピッチに立つまでに要したここまでの時間について、次のように振り返っている。

「グロインペインっぽい感じもあって、上げたいけどコンディションを上げられないみたいな状態があったので。今までそういう難しい時期を過ごしたことがなかったし、チームも調子が良かったので、なかなか難しい心境ではありました。けど、出られない時でもしっかりやってきた自負はあります。今日デビューしましたけど、関係なく続けてコツコツ積み上げていくだけかなと思っています」

 焦れる気持ちに負けないように自分と向き合いながら、山本はいつ出番が来てもいいように準備を続けてきた。いずれ自分が必要になる時がくると信じて。バイエルン戦の出場は、急に訪れたものではない。当日、監督からチャンスが訪れる可能性を伝えられたという。

「今日集まった時に監督から『きっと今日チャンスがある』みたいな話をされていたんです。出番がなかった時も腐らずやってきましたし、準備はできていました」

 実際に出番が訪れたのは、2点を追う後半だった。相手は強豪バイエルン。反撃の糸口をつかみたいが、相手にボールを握られる時間も長く、まずは守備で戦うことを念頭にピッチに入った。

「ボールに触るまではちょっと間もあったし、守備から入るという想像ができていたので、ボールに触れないところでも対人で強くやらなきゃなという気持ちで入っていましたね」

 少しずつボールに触れる機会も増え、終盤に1点を返してからは押せ押せムードにもなってはいたが、実際に相手と対峙しながら感じたのが、バイエルンの個々が持つ能力の高さだった。1対1の場面でその力の差を実感したという。

「確かに引き分けに持っていけたなという試合でもあります。ただ、やっぱり1対1で対峙した時に個人の力の差というのは自分でも感じたし、相手のうまさというのはすごく感じた。まだスタートなので、ここからしっかりフィジカルも含めてブンデス基準にしていけたらいいのかなと思います」

 ベルギーで経験を積み、ブンデスリーガへと舞台を移した。そこでさらに上のレベルへ進んでいくには、技術だけでなく、対人の強さやフィジカルも高めていかなければならない。初めてのピッチで、その課題がはっきりと見えたことを収穫として持ち帰っている。

 ある意味、デビュー戦の相手がバイエルンだったことは、結果として自分の現在地を知るうえでも貴重な機会となった。

「まずは早くデビューしたくて仕方がなかった。相手がどうとかよりも、今日デビューできた喜びと、しっかりこれを基準にしたら、また見える景色も変わってくると思う。だからバイエルンで、逆に今思えば良かったなと思います」

 そしてブンデスリーガならではの雰囲気も味わった。目の前のプレーに集中しつつも、ピッチ上の一つ一つの局面に反応する観客の声が印象に残ったという。

「いや、もう正直、自分のプレーでいっぱいいっぱいでしたけど(笑)。でも、プレーの後に歓声が上がって、ブワッとボルテージが上がる感覚というのは、本当にすげえなと思いましたし、これがブンデスだなと感じたので。こういうピッチで長く活躍できるようにやり続けたいなと思います」

 出場できない時間を経て、ようやく立ったブンデスリーガのピッチ。そこで得た喜びも、対人で感じた力の差も、山本にとってはこれからの基準となる。続く2部ヴォルフスブルクとのドイツカップ2回戦では出場機会はなかったものの、まずはチームが求める強度で戦い、そのうえで自分の特徴を発揮していくことが大切だろう。

 ユリアン・シュースター監督は、山本の資質へ確かな信頼を口にし、「プレーすることへの意欲が強く、ラストパスや自らゴールを狙うプレーなど、攻撃面で違いを生み出せる能力がある。現在より一つ前のポジションでの起用も考えられる」と期待をかけている。

 バイエルン戦で見えた課題を一つずつ埋めながら、次の出場機会をつかみ取っていく。なぜクラブが山本を獲得したのか。それが示されるときが、きっと近い将来訪れる。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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