批判的な空気→継続路線で”歴代2位タイ”の躍進 初のJ1制覇へ…最終順位を左右する勝負の6試合

今季11試合無敗のFC東京【写真:増田美咲】
今季11試合無敗のFC東京【写真:増田美咲】

7試合連続無失点で2位に躍進するFC東京

 2026-27シーズンのJ1は第12節を終了し、FC東京が2位につけている。開幕戦でFC町田ゼルビアに1-5と大敗したものの、その後は11試合無敗。直近7試合では連続無失点を記録し、10月25日の水戸ホーリーホック戦では6-0の大勝を飾った。勝点27で首位・町田と並び、27得点8失点という攻守のバランスも際立っている。

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 この躍進を考えるうえで欠かせないのが、松橋力蔵監督の下で継続してきたチーム作りだ。昨シーズンはチーム再構築の過程で成績が安定せず、監督に対する批判的な空気もあった。しかし、クラブは指揮官への信頼を維持し、継続路線を選択。百年構想リーグを経て、ボールを保持しながら相手を押し込み、奪われた際には素早く守備へ切り替える戦い方が浸透してきた。攻撃の組み立てが安定したことは、相手に攻撃される機会を減らすことにもつながっている。

 その成果には選手構成による好影響も表れている。最終ラインのアレクサンダー・ショルツ、韓国代表GKキム・スンギュは、個人能力だけでなく、的確な判断と豊富な経験でチームに落ち着きをもたらしている。欧州から復帰した室屋成も攻守にわたってチームを支える存在だ。さらに、負傷で一時離脱していた長友佑都も忘れてはならない。北中米W杯を経験したチーム最年長のベテランは、精神面でもチームを引っ張る存在となっている。一方で、大卒2年目のMF常盤亨太が百年構想リーグでブレイクするなど、若い力も台頭。経験豊富な選手と若手の組み合わせが機能し、松橋監督の選手起用や試合中の修正も好循環を生んでいる。

 水戸戦はFC東京の強みが発揮された。前半は相手の積極的な守備に苦しみ、ボールを失ってカウンターを受ける場面もあった。それでも32分、石原広教のクロスから今季リーグ初先発の仲川輝人が先制点を奪うと、後半の開始直後にも仲川が追加点。ハーフタイムを挟んで攻守の切り替えを改善し、相手を押し込む時間を増やした。さらに安斎颯馬、途中出場のダニ・ゴメス、ショルツ、マルセロ・ヒアンが得点し、6-0で快勝。第11節の柏レイソル戦から中3日という状況で、仲川のスタメン抜擢に加え、複数の選手が得点に絡み、セットプレーからもゴールを奪った。攻撃の選択肢が広がっていることを示す内容だった。

 ただし、ここまでの好成績には、上位チームとの対戦が比較的少なかったという側面もある。柏戦は0-0。攻撃力の高い柏を無得点に抑えたことは守備の完成度を裏づける一方、優勝を争う相手から勝ち点3を奪ううえでの課題も残した。拮抗した展開のなかで、いかに決定機を作り、それを得点につなげるか。水戸戦のように大量得点を奪える試合とは異なる難しさが、上位との直接対決にはある。

 FC東京はこれまでも優勝を期待させる戦いを見せたシーズンがあった。特に長谷川健太監督が率いた2018年には夏場に2位まで浮上しながら、後半戦に失速して最終6位。翌19年は長期間首位を走ったものの、終盤に横浜F・マリノスの逆転を許して2位に終わった。優勝争いの期間や展開は異なるが、いずれも一時はタイトルを狙える位置まで浮上しながら、頂点には届かなかったシーズンだ。

 もちろん、その原因を単純な「勝負弱さ」で説明することはできない。従来の春秋制では、夏の移籍市場で主力選手が欧州へ移籍するなど、シーズン途中の戦力変動がチーム作りに影響することもあった。秋春制へ移行した今季は、夏の移籍市場とシーズンの関係が変わったが、冬の移籍市場を含めて選手の出入りがどう影響するか。クラブ史上初のリーグ優勝を実現するためには、好調な時期を作るだけでなく、長いシーズンを通じてチームの完成度を維持する必要がある。

 FC東京の真価が試されるのはここからだ。まだシーズンの折り返しにも達しておらず、冬の中断期間を挟むことを考えても、先は長い。そのなかで前半戦の残り6試合は、10位のファジアーノ岡山とのアウェー戦から始まる。昨年は敵地で0-1と敗れた相手であり、守備を固めてロングボールを効果的に使ってくるスタイルは柏や前節の水戸とも異なる。さらに上位争いの直接ライバルである鹿島、セレッソ大阪、サンフレッチェ広島、横浜FM、川崎フロンターレとの対戦が続くFC東京。特に広島戦は上位定着、さらにはリーグ優勝を目指すうえでの試金石になるだろう。

 ここまでFC東京は、攻守がかみ合った戦いで際立った安定感を示してきた。しかし、これからは対戦相手も厳しくなる。ただ、そうした戦いでも勝ち点を積み上げていくベースは十分に備わっているはずだ。良い意味で過去のシーズンとの違いを示すためにも、前半戦の残り6試合は内容も結果も注目に値する。クラブが信じて続けてきたチーム作りの成果を、シーズン終盤まで持続できるかどうかが、最終順位への鍵を握っている。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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