初J1で苦境「上がった意味も価値も失う」 痛恨失点→4連敗で涙…最古参28歳が危機感「甘い世界じゃない」

水戸の大崎航詩【写真:徳原隆元】
水戸の大崎航詩【写真:徳原隆元】

大崎航詩が振り返った浦和戦の失点シーン

 今シーズンからクラブ史上で初めてJ1の舞台で戦う水戸ホーリーホックが4連敗の苦境に陥っている。17日の浦和レッズとの第10節では開始わずか10分に退場者を出し、残り80分あまりを必死に耐え忍びながらも、スコアレスドローにもち込む直前に決勝点を奪われて万事休した。痛恨の失点に関与し、試合後にはベンチで涙を流した在籍6年目のチーム最古参、28歳の大崎航詩の言葉から水戸の現在地を紐解いた。(取材・文=藤江直人)

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 連敗が4に伸びた。それまで5戦連続無敗で1つ勝ち越していたはずが、1か月あまりの間に借金が3に膨らんだ。チーム最多の5ゴールを挙げていたキャプテン、FW渡邉新太も怪我で戦線離脱を余儀なくされた。

 クラブ史上で初めてJ1に挑んでいる水戸ホーリーホックの前に、リーグ戦の約4分の1を終えた段階で厳しい数字や状況が並ぶ。それでも在籍6年目のチーム最古参、28歳の大崎航詩は努めて前を向いた。

「これまでができすぎていた部分もありました。でもJ1に初めて上がった自分たちが、簡単に勝ち点をポンポンと積み重ねて上位に食い込んでいけるとか、そんなに甘い世界じゃないと思っていました」

 前哨戦となった今年前半のJ1百年構想リーグは、V・ファーレン長崎とのプレーオフラウンドを含めて6連敗でフィニッシュ。20チーム中で18位にとどまった結果を踏まえながら、大崎はさらにこう続けた。

「それが僕たちの実力。だからと言って4連敗で終わったわけでもないし、まだまだ降格圏に入ったわけでもないし、悲観する必要もない。ただ、起きている事実に対しては全員が目をそらしてはいけないと思う」

 ホームの水戸信用金庫スタジアムに浦和レッズを迎えた17日のJ1リーグ第10節。百年構想リーグを含めた公式戦で過去7戦全敗だった浦和を相手に、前半開始わずか10分でボランチの仙波大志が一発退場を宣告され、80分あまりを10人で戦ってきた水戸はあと数十秒で引き分けにもちこめる状況まで必死に粘り抜いた。

 しかし、連敗ストップへ膨らみかけたホームの大観衆の期待は一瞬で悲鳴とため息へと変わった。

 左サイドへ流れてきたボールを拾った浦和の早川隼平が、ゴールライン際からクロスを供給する。山なりの軌道を描いたボールは水戸ゴール前に陣取っていた敵味方を越えて、逆サイドのゴールライン際へ落ちていく。

 落下点にポジションを取っていたのは、キックオフ時の左サイドバックから、後半開始の<5-3-1>へのシステム変更とともに左ウイングバックに移っていた大崎。しかし、思考回路は二者択一で揺れていた。

「あそこで相手のコーナーキック(CK)にする、という判断を自分のなかで躊躇したところがありました」

 右タッチライン際に浦和の金子拓郎の姿が見えた状況で、大崎はあえて右CKへ逃れるクリアを見送る。ボールが金子に渡った流れを、大崎は「周りがとやかく言うのは分かります」と断りを入れた上でこう続けた。

「ずっとファーで相手のCKを見ていたなかで、しっかりと弾けないとか、セカンドボールを拾われてシュート打たれるとか、自分としてすごく怖いプレーが続いていた。あの時間だとおそらく(ゴールキーパーの)西川(周作)選手も上がってきて、相手の枚数もさらに増えて事故が起こる確率が大きくなるんじゃないか、と」

 浦和の14本目のCKではなく、大崎と金子の1対1に変わった場面。それまでは2人がかりで何とか封じ込めていた金子にかわされ、利き足の左足から正確なクロスを自軍のゴール前へ供給された直後だった。

 後方からやや遅れて飛び込んできたMF笹修大が、会心のヘディングシュートを見舞う。直前まで25本ものシュートを浴びながら、何度もビッグセーブを演じてきた加入後初出場のGKヤクブ・スウォヴィクの牙城に風穴が開けられたとき、時計の針は表示されていた後半アディショナルタイムの4分台に突入していた。

 大崎は「最後のあのシーンがすべてだと思う」と金子にかわされた自分自身を責め、さらにこう続けた。

「あそこでCKにして失点しても結局、僕のなかで後悔が残る。あの場面だけ金子選手と1対1になったなかで、僕が止めたら判断はよかったとなるし、失点したから僕の判断が悪かったとなる。何が正しくて、何が間違っているかは分からないし、結果論と言えば結果論になる。ただ、チームとしてあそこでやられてしまった。自分のところだけでなく中を含めてどのようにすべきだったのか、というところは考えていかなければいけない」

 百年構想リーグの浦和戦を振り返れば、ともに退場者を出した末にアウェーで0-2、ホームでは1-4で連敗した。後者では退場者が出て、数的不利になった後半25分、32分、34分と立て続けに失点した。

 同じ数的不利に陥った展開でも、後半アディショナルタイム4分までともにスコアレスを続けた。大崎は「これまでの経験を無駄にしなかった点で、積みあげてきたものは確実にある」としたうえでこう続けた。

「それでも結果として負けて、勝ち点も取れなかったなかで自分たちが何をできたのかを、もう少し考えていかないといけない。1対1になるとあのようにいいクロスを上げられて、あの1本だけで仕留めてくる力があり、そのようにして歴史と伝統を築いてきたチームが浦和レッズだし、自分たちには1人で局面を打開できる選手もいないなかで、どのようにして最後、相手ゴールをこじ開けていくのか。そこはまた1つ課題になった」

 両チームの初対決は2000年シーズンまでさかのぼる。水戸が日本フットボールリーグ(JFL)から昇格を果たし、浦和がクラブ史上で初の降格を喫したJ2の舞台で、当時のレギュレーションで4回対戦した。

 現在は水戸のゼネラルマネージャーを務める本間幸司氏がゴールマウスを守っていた水戸に対して、浦和は4戦全勝をマーク。本間氏がリザーブに名を連ねた2019年の天皇杯3回戦も浦和に軍配が上がった。

 そしてJ2を戦い続けた水戸が悲願だったJ1への初昇格を果たし、百年構想リーグとJ1リーグで3度対峙した2026年。浦和に喫した3つの黒星を介して、あらためて教えられたものがあると大崎は再び前を向いた。

「資金力で言えば5倍も6倍も上回るチームだし、そこは避けては通れないし、そういうチームに何年かかってもいいから追いついていかなければいけない。そのためにはJ1に残留しないと、浦和レッズのような歴史と伝統は築いていけない。僕たちのJ1での歴史はまだ始まったばかりだし、そこで簡単に落ちているようでは水戸がJ1に上がった意味も価値も失ってしまう。今は4連敗という現状に対して全員で目を向けて、結局は練習しかないし、そういったところを突き詰めて次の試合、また次の試合と向かっていけたらと思う」

 開幕から全試合で先発し、清水エスパルスとの第9節までフルタイム出場を続けていた仙波には2試合の出場停止が科された。全治などは発表されていないものの、渡邉は左膝内側側副靭帯損傷と診断されている。FW内野航太郎やMF鳥海芳樹、DF河面旺成、加入したばかりのDF岡本一真も怪我で戦列を離れている。

 連敗に故障禍が追い打ちをかける状況で、チームの精神的な支柱でもある大崎はこんな言葉を残す。

「リーグ戦はまだ30試合近く残っている。最後にチーム全員で笑い合えたらいい」

 4連敗を喫したとはいえ、水戸は順位を3つ落とした14位で踏みとどまっている。金子にクロスを上げられた自分を責め、試合後にはベンチで号泣しながらも必死に奮い立たせた大崎の姿と言葉が水戸の羅針盤になる。

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藤江直人

ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。

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