U-21→A代表昇格の筆頭候補「絶対に必要」 J1でも増す存在感…大岩監督が重視した“抜き切る力”

準優勝のアジア大会で力を示した選手たち
9月・10月の日本代表活動とほぼ同時期に開催された2026年アジア大会(愛知)。大岩剛監督率いるU-21日本代表は、U-23韓国代表(オーバーエイジ3人を含む)に決勝で0-1の苦杯を喫し、4大会連続でタイトルを逃した。
「選手の特徴は出ていたし、狙いとするサッカーもやれている部分もあったと思います。もちろん決勝で勝ち切ることができれば最高の結果でしたが、『いい流れの中で点を取らなければ、ああなる』ということを選手たちも感じたはず。後から振り返った時に『あの経験をしてよかった』と思えるような機会にしてほしいと思います」
10月3日に豊田スタジアムでファイナルを視察した日本サッカー協会(JFA)の宮本恒靖会長もこう語っていたが、大岩監督も選手たちもこの悔しい経験を今後の糧にしなければならないのは確かだ。
今大会の日本は、あえてU-21世代でトーナメントに挑んだ。自国開催ということで、大岩監督は市原吏音(AZ)、小杉啓太(フランクフルト)、石渡ネルソン(シント=トロイデン)、ンワディケ・ウチェブライアン世雄(オールボー)の欧州組4人は招集したが、基本的にはJリーグのメンバー。大関友翔(川崎フロンターレ)、横山夢樹(セレッソ大阪)や嶋本悠大(清水エスパルス)、石井久継(湘南ベルマーレ)、荒木琉偉(ガンバ大阪)らが主軸を担う形だった。
とはいえ、大岩監督は特定の選手に依存しない戦いを選んだ。その姿勢が顕著に表れたのが、決勝トーナメント突入後。準々決勝・北朝鮮戦(豊田)と決勝・韓国戦(同)はほぼ同じメンバーだったが、準決勝・ウズベキスタン戦(大阪)は市原、大関、横山、嶋本らを温存。GKに関しても荒木とピサノアレックス幸冬堀尾(名古屋グランパス)を試合ごとに入れ替えた。
これはリスクの高い選択で、結果的には準決勝で苦戦。120分+PK戦までもつれこんだことが、決勝に響く形となった。それでも「この過密日程は誰が出ても戦えるチームでないと乗り切れない」という大岩監督の強い意思が見て取れた。森保一監督だったら、必ずどこかで主力に頼ってしまうだろうし、実際、2026年北中米ワールドカップ(W杯)でも3戦目のスウェーデン戦(ダラス)でメンバー大幅入れ替えに踏み切れなかった。その点、大岩監督の覚悟は前向きに評価していいのではないか。
もちろん欲を言えば、森保ジャパンに帯同した塩貝健人(ヴォルフスブルク)、後藤啓介(フライブルク)、齋藤俊輔(ウェステルロー)、佐藤龍之介(バレンシア)のようなA代表でも通用するロサンゼルス五輪世代を呼びたかっただろう。そうすれば、大胆な選手入れ替えを断行しても、選手層は維持できただろう。今回はJFAと森保監督、大岩監督が意思疎通を図った結果、こうなったのだからやむを得ないところ。アジア大会全体をしっかりと検証して、先につなげてほしい。
そんななか、やはり気になるのは「ここから近い将来、A代表に昇格する人材は出てくるのか」という点だ。
有力候補筆頭と言えるのが、横山だろう。2025年まではJ2で戦っていた彼は2026年1月からセレッソ大阪へ移籍。アーサー・パパス監督(現アル・イテファク)に重用され、U-21での主戦場だった左ウイングのみならず、右ウイングでもプレー。切れ味鋭いドリブルで見る者を魅了していた。そしてパブロ・マチン現監督体制ではシャドーの一角で起用され、ドリブル突破だけでなく、フィニッシュでも迫力を増している。
その自信が明らかに今大会で出ていた。横山の突破力を大岩監督も重視。ここ一番では彼に託す場面も多かった。韓国戦で決定機を決めきれず、優勝を逃したあと、本人は「シュートを打つ自信はありましたけど、そこを仕留め切る力というのは、これから先、絶対に必要になってくる。その能力をもっともっとつけたいと思います」と強調。悔しさをにじませていた。
対戦相手がどこも2枚がかりでマークをつけてくるほど、横山のドリブルで抜き切る力は非凡。その彼がさらに突き抜けていくためには、本人も言うように決定力が必要不可欠だ。同じウインガーの三笘薫(ブライトン)、中村敬斗(リヨン)も得点力が高いから、欧州5大リーグまで辿り着けたのだ。
横山にもその可能性があるのは確か。だからこそ、フィニッシュの部分を磨いていかないといけない。幸いにして、同じチームに香川真司という世界最高峰レベルを知り尽くす大先輩がいるのは心強い。今の環境を最大限生かしてほしいものだ。
次の候補は小杉。彼の場合、今大会は合流が遅かったうえ、コンディション的にも厳しかったため、大岩監督は準主力組のリーダーといった形で起用していた。本来は決勝で使おうと考えていたのだろうが、準決勝・ウズベキ戦で120分戦ったダメージが大きく、アップすらできない状態だった。本人も「フランクフルトのレギュラー」という称号を引っ提げ、参加した今大会で不完全燃焼感を覚えたことだろう。
ただ、彼は欧州5大リーグで定位置を掴んでいる選手。先輩・堂安律と日々、一緒にプレーし、A代表基準を体感できる環境にある。森保監督も9月・10月シリーズ前に「アジア大会の方で呼びたかった選手がいた」と語ったが、それがズバリ小杉だろう。彼がA代表に呼ばれる日はそう遠くないはず。もしかしたら2027年アジアカップ(サウジアラビア)参戦もあり得るのではないか。
そのほかに目を向けると、市原、ンワディケ、荒木あたりは将来性に期待したいところだ。
まず市原に関しては、小杉同様、大会は途中参加だったが、所属するAZのセカンドチームでプレーしているのを考慮され、グループリーグ中には合流。重要な北朝鮮戦と韓国戦に出場している。
「すべてにおいてレベルアップは必須ですし、今、これというのは難しいけど、技術も身体もレベルアップをもっともっとしていかないといけない」と本人も決勝後に強調しているように、まずはAZのトップチームに昇格し、毎熊晟矢らと共闘できる地位を掴むことが最優先だ。
今回のA代表に齋藤や佐藤が呼ばれたのも、トップリーグで爪痕を残しているから。そこは賢い市原ならよく分かっているはず。森保監督、大岩監督ともに若い世代のDF陣の中心が市原だということを理解し、「高井幸大(シント=トロイデン)と市原には成長してもらわなければ困る」と感じているかもしれない。市原はその期待に早く応えるべきだ。
ンワディケは決勝途中で負傷退場してしまったが、北朝鮮戦では持ち前のフィジカルの強さと収める力をアピール。決勝点もゲットするという光る仕事を見せていた。パリ・ロス五輪世代の大型FWが思ったように伸びていないなか、桐蔭横浜大学からいち早くデンマーク2部に行く選択をしたのは前向きなポイントだ。
「デンマーク2部は1部より個人能力を求められるというか、サッカーのうまさより個の力が大事なリーグ。そこを伸ばすにはいい環境だと思います」と本人も語っている。自らが選んだリーグで最大限、力を蓄えてもらいたい。
荒木もいずれはA代表になると言われている逸材。すでにG大阪でも実績を残している。ただ、決勝の失点シーンを見ると、判断やスキルをもう一段階伸ばさなければならないのは事実。「自分もチームも個々の部分でまだまだ負けているシーンが多かったし、フィジカルでも技術でも課題を潰していかないといけない。この悔しさを忘れちゃいけない」と決勝後にもコメントしていた。この言葉を胸に鈴木彩艶(アストン・ビラ)という偉大な先人を貪欲に泥臭く追いかけてほしい。
大関にしても川崎で定位置を確保するところからのスタートだが、とにかく所属クラブで実績を残さなければA代表には辿り着けない。彼らがここからどのような軌跡を辿るのか。しっかりと注視していきたい。
(元川悦子 / Etsuko Motokawa)

元川悦子
もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。

















