森保Jの懸念材料“鉄板ジョーカー”依存 アジア杯までに新選択肢の発見急務…必要な若手台頭

日本代表の伊東純也【写真:増田美咲】
日本代表の伊東純也【写真:増田美咲】

9・10月シリーズで浮き彫りになった伊東不在時への懸念

 2027年アジアカップ(サウジアラビア)に向け、再始動した第3次森保ジャパンの9・10月シリーズが5日のニュージーランド戦(東京・国立)で幕を閉じた。

 今回はウルグアイ、ベネズエラ、エクアドルという南米勢とオセアニアの雄との4連戦を日本代表は全勝で終了。3か月後のアジアの大舞台に向け、勢いをつけると同時に、森保一監督に課されている「勝ってFIFAランキングを上昇させる」というタスクも果たすことができた。

 ただ、4試合の得点者を見ると、エースFW上田綺世(リール)が4点、新キャプテン&10番の堂安律(フランクフルト)、若き切り札・塩貝健人(ヴォルフスブルク)、今回がA代表初招集だった松木玖生(サウサンプトン)がそれぞれ1点。絶対的得点源への依存状態が目立つ。これは1つの懸念材料だ。

 南米勢3連戦のシュート数が2桁に到達せず、名波浩コーチがニュージーランド戦前に北中米ワールドカップ(W杯)に出場したスーパースターのシュート集映像を選手に見せた効果もあり、最終戦では開始50秒に強引なミドルを放った堂安を筆頭に、攻撃陣全体のフィニッシュへの意欲が向上。5-4-1のブロックで守る相手に対し、20本以上のシュートを浴びせたのは明るい出来事だった。

 とはいえ、それが確実に結果に結びついていないのも事実。アジアカップになれば、もっと相手はガチガチに引いて徹底した守備戦術を講じてくる可能性も否定できない。そこで上田以外の誰が得点源になるのか。そこは1つ、重要なテーマだ。

 もう1つ、このシリーズで見て取れた課題と言えるのが、“特定ジョーカー”への依存。それはズバリ、伊東純也(ゲンク)だ。

 33歳の大ベテランは4戦すべてで後半途中出場。まずウルグアイ戦では、1-1の状況で後半18分に登場すると、右ウイングバック(WB)に陣取り、爆発的なスピードで一気に流れを引き寄せると、終了間際にはスーパーなスルーパスで上田の3点目をお膳立て。際立った能力の高さを示した。

 2戦目のベネズエラ戦でも、伊東は後半頭から左シャドーで出場。日本が開始早々にリードを許すと、4分後に目の覚めるようなクロスで上田の同点弾をアシストしてみせた。

「純也くんと目が合ったタイミングでは、僕がギリギリで判断を変えて、相手の逆を突く形になったんですけど、それをしっかりと純也くんが間接視野で見ていたみたいなので、そこにしっかり蹴れる技術とスピードですね。本当にパスがよかったとしか言いようがない」と決めたエースFWも絶賛するほど、伊東のクオリティの高さが如実に示された1シーンだった。

 しかも、10人になった終盤には異例の右サイドバック(SB)でプレー。2022年カタールW杯でWB、ウイング、シャドー、トップと複数ポジションをこなしたように、マルチな仕事ぶりで見る者を大いに驚かせた。

 続くエクアドル戦は後半22分に右シャドーで登場。鎌田大地(クリスタル・パレス)、前田大然(イプスウィッチ)とコンビを組んで、ゴールに迫った。得点関与こそなかったものの、伊東が出てくるだけでギアが上がるのは紛れもない事実。そこは森保監督も心強く感じているはずだ。

 そして最後のニュージーランド戦では、後半19分から中村敬斗(リヨン)らとともに3枚替えで出場。またも右SBに陣取りながら、鋭いクロスや右サイドでの連係で敵の守備を攻略。29分には中村への効果的なサイドチェンジで相手を揺さぶった。

「伊東選手と今日一緒に途中出場しましたけど、いかに彼が流れを変えられるのかというのを改めて実感しました。4試合全部途中出場で試合の流れを変えて結果を出していた。ランスで2年間一緒にやってきましたけど、本当に見習うことが多いなと思います」と中村も神妙な面持ちで言う。「もしも伊東純也を2026年W杯ブラジル戦でベンチに置いておける状況だったが、結末はまた違っていたのではないか」という複雑な感情を抱いた関係者やメディア、サポーターも少なくなかっただろう。

 つまり、大きな大会を制するためには、伊東のように確実にリズムに変化をつけられて、ゴールに直結する決定的な仕事ができる非凡なタレントが複数いるのが理想的。むしろそうでなければ勝てないと言っても過言ではない。

 2026年W杯アジア最終予選の時は南野拓実(モナコ)や三笘薫(ブライトン)が使えたから、伊東や中村をベンチにキープしておけた。時には久保建英(レアル・ソシエダ)でさえも、控えからスタートしたことがある。

 それが本大会になった途端、南野、三笘、久保が使えなくなり、キャプテン・遠藤航(リバプール)も大会直前に離脱したのだから、大幅に計算が狂ったのは間違いない。この二の舞だけは決して演じてはいけないのだ。

 遠藤はすでに代表引退を表明し、南野と三笘は使えないだろうから、伊東や中村を何とかベンチに温存しながら戦っていける陣容を整備することが最優先。それが11月以降の森保監督に託された重要命題の1つである。

 今の代表はニュージーランド戦で先発した上田、堂安、久保、前田の1~2枚でも欠けると伊東や中村をスタメン組に組み込まざるを得なくなってしまう。となると、やはりサブの陣容が手薄になるのだ。

 このシリーズでは塩貝が気を吐き、2026年W杯の時よりも起用時間が長くなったものの、最終戦終盤のカウンターのチャンスでフリーの中村が見えずにボールを取られてしまうといった判断ミスがまだまだ散見される。彼を伊東のように幅広い役割で使うことは難しい。

 それは鈴木唯人や後藤啓介(ともにフライブルク)にしても同様だ。佐野航大(PSV)と松木は多用な起用法があるかもしれないが、この4連戦を見る限りだと、若手グループの中に伊東のような働きを見せられる人材はまだいない。それが3か月間で出てきてくれれば、指揮官はより安心感を持って大舞台に挑むことができるのではないか。

 2019年UAE大会準優勝、24年カタール大会8強とアジアの頂点に手が届いていない森保監督にとって、切れ味鋭いジョーカーを用意することは悲願達成の大きなポイント。残された時間で徹底的にそこに取り組んで、最適解を見出してほしいものである。

(元川悦子 / Etsuko Motokawa)



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元川悦子

もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。

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