高校生でプロ3試合出場「全然違った」 J内定の逸材MF…指揮官から得た金言「海外も近くなる」

帝京高3年・渡辺莉太「高校サッカーではまだ感じたことがない感覚でした」
9月5日に夏の中断期間を経て再開したプレミアリーグとプリンスリーグ。1年を通じた戦いもいよいよ後期へ突入し、夏を経て成長をした選手たちが凌ぎを削っている。ここではリーグ戦で躍動を見せる選手たちをピックアップしていきたい。今回はプリンスリーグ関東1部の流通経済大柏Bvs帝京の一戦で、圧倒的な存在感を見せた帝京の3年MF渡辺莉太について。高校生離れした『眼』が、2つのゴールを生み出した。
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流通経済大柏Bとのアウェーゲームにおいて、帝京は敵地で2-1の勝利を手にした。その2ゴールを演出したのが、来季の横浜FC加入が内定している渡辺だった。0-0で迎えた後半2分。右サイドでボールを持った渡辺は、左足から絶妙なクロス。FW東江心平の先制点をアシストした。
一見すれば、高精度の左足が生み出したクロス。しかし、渡辺の頭の中では、ボールを蹴るまでのわずかな時間にいくつもの情報が処理されていた。
「前半から相手のCBのクロス対応がそこまでスムーズに行っていなかったので、クロスは積極的に狙っていました。最初は左足のアウトで巻こうとしたのですが、相手DFは僕が持った時にラインを上げようとしていて、前に出した右足に重心がかかっていた。反転でしか対応できない裏のスペースに東江が入ろうとしていたので、そこに落とせば対応できないと思ったんです。なので、左足のインサイドで巻いて勢いをつけた方が東江に合いやすいと思って判断を変えました」
そして1-1で迎えた後半42分。今度はさらに渡辺らしさが詰まったプレーだった。センターライン付近の敵陣の右サイドでセカンドボールを拾うと、そのまま右から中央へドリブルを開始。当初描いていたのは、ドリブルをしてから左のウイングバックへのパスか、そのままラインブレイクを仕掛けて、フィニッシュかラストパスまで持ち込む形だった。
だが、その瞬間だった。「間接視野でFW山田知希が右ポケット(ペナルティーエリア内右)のスペース」に動き出そうとしているのが見えた」と、一瞬で判断を変えた。
バランスを崩しながらも左足を振り抜き、右前方へ走り込んだ山田知希へスルーパス。相手DFは完全に渡辺の突破と左サイドへの展開を警戒しており、山田は完全にフリーになっていた。パスを出した後、渡辺はその場で倒れたが、しっかりと左足で捉えたパスは糸を引くように山田の足元に届き、決勝ゴールへとつながった。
「どんな体勢でも左足のキックはきちんと出せる自信がありました。僕はどちらかというと、周りの動きに対して自分が合わせる側の選手。仲間が走ってくれるなら、そこに合わせることは僕の仕事でもあるし、それを通してなんぼだと思っています」
見て、感じて、直前で判断を変える。それこそが渡辺の大きな武器だ。そして、その武器がどこまで通用するのかを、彼はすでに高校サッカーよりもはるかに厳しい場所で確かめている。
横浜FCの特別指定選手として、ここまでルヴァンカップ2試合、J2リーグ1試合に出場。ルヴァンカップでは2試合連続スタメン出場を果たし、高校3年生ながらプロの公式戦のピッチに立った。そこで感じたのは、まず高校年代とは明らかに異なるスピードと強度だった。
「スペースや人の動き、相手の動きが見えるというのは僕の武器なので、そこはプロの世界でも変わらず出せたと思います。でも、それ以上にプレースピードや質、強度は全然違った。本当に1本のパスがゴールにつながるし、逆に1つのミスが失点にもつながる。一つ一つの質に対するこだわりは強くなりました」
同時に、確かな手応えも得た。相手を見る。スペースを見る。その逆を取る。そして左足で決定的な仕事をする。「自分の長所の部分は、プロの中でも十分に通用した」と大きな自信を掴んだ。だが、プロ3試合で彼が得た最大の気づきは、技術でもスピードでもなかった。
「『お客さんのためにプレーする』という感覚でした。これは高校サッカーではまだ感じたことがない感覚でした」
この言葉はとても印象的だった。これまでの渡辺には、自分自身がサッカーを楽しみ、自分の得意なプレーを表現したいという思いが強かった。それ自体はこれからも変わらない。ただ、プロのピッチに立ったことで、その先にいる人たちが見えるようになった。
「プロサッカー選手はサッカーをすることが商売で、試合に勝つことはもちろん、お金を払ってスタジアムに足を運んでくださったファン・サポーターなど、見に来てくれた人たちを楽しませて、盛り上げないといけない。その感覚が自分の中で大きな変化をもたらしました」
魅せたい。それは高い技術を見せて、攻撃を操る姿だけではない。必死で走って、ボールを奪って、ゴール前では身体を張って守るというプレーも含まれている。
「須藤大輔監督からも『攻撃は他の選手とは違うものを持っている。もっと上に行ける素質があるから、フィジカルや守備のレベルをもっと上げていけば、海外も近くなる』と言われています。上に行くためにも、高いお金を払って見に来てくれている人たちの心を動かすようなプレーをするためにも、守備力、フィジカルの向上はやらなければいけないことだと受け止めています」
プロの世界を夢見ていた高校生は、ひと足先にそのピッチに立った。そこで自分の武器が通用する手応えを掴み、同時に足りないものを知った。そして何より、自分が楽しむだけではなく、スタンドにいる誰かを楽しませるためにプレーするという、これまでにはなかった感覚を手にした。
高校生活は残りわずか。帝京にはプリンス関東1残留という目標があり、その先には高校最後の選手権が待っている。そして横浜FCのユニフォームを正式に身にまとう日は、もう遠い未来ではない。
「最後の選手権でもっと名前を売りたい。プロのチャンスもあると思うので、どちらもうまく両立しながら、プロでもしっかり活躍して、早く横浜FCの主力になれるようになりたいです」
プロのピッチを経験したからこそ、見えるようになった景色がある。もともと多くのものが「見える」選手だった渡辺莉太は今、ピッチの中だけではなく、その外にいる人たちまで視界に入れながら、高校最後の時間を駆け抜けようとしている。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。

















